Mike Seal(G)
Taylor Lee(El-B)
Jeff Sipe(Ds)
Rec. August-September, 2013, Washington
(Abstract Logix ABLX045)
ジェフ・サイプ(1959年、ドイツ生まれ)は、アレックス・マクヘイサックのトリオ(「Alex Machacek,J. Sipe,M. Garrison/Pmprovision(07年)」「Alex Machacek/The Official Triangle Sessions(09年)」「Abstract Logix Live! / The New Universe Music Festival 2010(11年)」各別頁あり)で初めて知ったドラマー。デイヴ・ウェックルほどの超絶ドラマーではないけれど、難曲をものともしないテクニカルなプレイがなかなかカッコよかったので、本人のサイトを見ると10枚目のリーダー作らしい本作にもすぐに飛びついた。これが初聴きとなるメンバーのマイク・シールとテイラー・リーは、その中の「Jeff Sipe Trio with Mike Seal & Taylor Lee / Happy Evil Happy(12年)」「Jeff Sipe Group / Live Studio(12年)」にも参加。リーは本人のサイトが見つかったので後で目を通しておくとして、シールについてはこれといったものが見当たらないので、経歴等は割愛する。
サイプ曲が2曲(リートの共作を含む)、シール曲が4曲、リー曲が2曲(Jaron Bradleyとの共作を含む)、コルトレーンの「Naima」、Hank Williams Sr.の「I'm So Lonesome I Could Cry」で全10曲。
マクヘイサックのトリオほど難易度は高くないし、ソフトタッチな曲も多かったりするのだが、かといって単に聴きやすいだけの演奏に終わっていないのはテクニカルなフュージョンをやっているから。1曲目「Trumpets」のビシッと決まるテーマのリフからして、早くもカッコいいことになっているね。トリオとしての肌触りは、ビレリ・ラグレーンのドミニク・ディ・ピアッツァ、デニス・チェンバースとの共演盤「Front Page(00年)」あたりに近いものがある。あえてギターの音色を統一しながらテクニック一本で勝負しているシールといい、ボトムをガッチリとキープしていながらも、いざというときには速弾きで聴かせてくれる、チョッパーはやらない派のリーのベースといい(一音一音の音の伸ばし方にまで神経が行き届いている)、ワンタム、ワンフロアで、なおかつシンバルの点数も少ないシンプルなドラムセットから、タイトかつスピーディーなビートを送り出しているサイプといい、各人とも持ち味を存分に発揮しながら、その上手さを魅せつけてくれる。3人とも基本的にはジャズ屋なのか、7曲目では「Naima」を取り上げているけれど、現代的なアレンジを施しながら最高にカッコいい演奏に仕上がっているし、サイプが大炸裂している10曲目「Happy Euil Happy」に至っては凄みさえ感じられて、ギタートリオという最小ユニットで、ここまでカッコいいことをられてしまっては何の文句もつけようがないね。いい意味でバラエティに富んだ選曲となっているおかげで、聴いている途中で退屈するようなことも全くない。
ということで本作は想像していた以上に良かった。録音も各楽器が過不足なく録れていて上々なので、これはオマケして5つ星にしておこう。サイプのドラミングに関しては、ジャズ用のドラムセットで本格的なフュージョン演奏するときのいい手本にもなる。
評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)