Chick Corea(P, Motif XF8, Moog Voyager)
Tim Garland(Ts, Ss, B-Cl, Fl)
Charles Altura(El-G, Ac-G)
Hadrien Feraud(El-B)
Marcus Gilmore(Ds)
Pernell Saturnino(Per)1,2,3
Gayle Moran Corea(Vo)5
Stanley Clarke(Ac-B)6
Ravi Coltrane(Ts, Ss)6
Rec. 2013?, CA
(Concord Jazz 7234578)
チェンバー・オーケストラとの共演盤「Chick Corea / The Continents (Conserto for Jazz Quintet & Chamber Orchestra)(12年、別頁あり)」の反動でか、今度はギター入りのエレクトリックなアルバムの登場だけど、「Return To Forever / Romantic Warrior(76年、別頁あり)」、あるいはその後にチック・コリアのバンドに加わったバニー・ブルネルの「Bunny Brunel / Ivanhoe(82年、こちらのジャケット)」あたりを連想させる騎士ジャケットに加えて、バンド名「ザ・ヴィジル」がカッコいいロゴマークになっていることからも、本バンドに対するコリアの本気度が窺える。メンバーは「The Continents」にも参加していたティム・ガーランド(かつてのオリジン・バンドの一員でもあった)とマーカス・ギルモアに加えて、新進気鋭(かな?)のギタリストのチャールズ・アルトゥラ、コリアとは「Five Trios Series」中の1枚「Corea,Feraud,Barshay/Brooklyn,Paris to Clearwater(07年、別頁あり)」でも共演している超絶ベーシストのアドリアン・フェローといった若手を中心に構成されているけれど、はたしてこの面々でどのような演奏が繰り広げられているのか楽しみだ。
全7曲がコリアのオリジナル。
1曲目「Galaxy 32 Star 4」は、RTFやエレクトリックバンドに近い感じのエレクトリックな演奏だけど、ガーランドのソプラノが加わっているし、ギルモアがジャズ用のドラムセットをそのまま用いて叩いているので、よりジャズ色が強まっている感じがするね。エレピ風な音で弾いているコリアが相変わらずカッコいいのは当然として、これが初聴きのアルトゥラの、フランク・ギャンバレを連想させるようなプレイもなかなかのもの。またフェローもテクニカルなソロで聴かせてくれる。私としてはこういう曲のドラマーは、「C. Corea&J. McLaughlin/Five Peace Band Live(07年、別頁あり)」に参加していたヴィニー・カリウタあたりがの方が合っていそうな気がするのだが、それだとこれまでと大差ないサウンドになってしまうので、やはりジャズ屋のギルモアで正解なのだろう。彼が叩くことにより、楽曲はもろフュージョンながらも演奏はジャズという、過去にはあまり体験したことのない不思議な感触が味わえる。2曲目「Panet Chia」はコリアお得意のスパニッシュ調。1曲目とは異なりアコピとアコギを用いているので、その分サウンドがアコースティックになっているのだが、そんな中コリア、ガーランド(ソプラノ)、アルトゥラ、フェローがいい感じのアドリブで聴かせてくれる。特にアルトゥラはフラメンコギターにも精通しているようで、彼がバンドに起用された理由も本演奏を聴くと納得する。3曲目「Paftals to Forever」は6/8拍子。こちらはエレピ風な音によるエレクトリックな演奏だけど、「タン・タン・タタ・ンタ・ンタ・ンタ」というアフリカ的なリズムに乗っかって、これまた各人がいい感じのアドリブを取っていて、中盤からはガーランドとアルトゥラ、コリアとフェローのイケイケな4バースも楽しめるし、後半にはギルモアのダイナミックなソロも用意されている。コリアがアコピを弾いている最後の部分は4ビートにもチェンジしているので、1曲目で感じていたギルモアに対するちょっとした違和感も消え失せる。4曲目「Royalty」はアコースティックな演奏。3拍子の曲だけど、純粋なジャズ演奏なので、ますますギルモアの重要度が増しているね。アドリブはガーランドのテナー、アルトゥラ共に魅力的だけど、最後に弾いているフェローがテクニカルかつ歌心もたっぷりなソロで、美味しい部分をかっさらっているのが微笑ましい。5曲目「Outside of Space」はゲイル・モラン(近作では「小曽根真 / Live & Let Live - Love For Japan(11年、別頁あり)」中の1曲にも、コリア共々参加していた)入りの曲。わたし的にモランが歌っている曲といえば、なんといっても「Chick Corea / The Leprechaun(76年、別頁あり)」に収録されている「Looking at the World」だけど、それと比べると曲調的にはさっぱりしているものの、それなりのヴォーカルで楽しませてくれるし、アルバムのいいアクセントにもなっている。6曲目「Pladge for Peace」はスタンリー・クラーク、ラヴィ・コルトレーン入りの4ビート曲で、この曲だけはライブ収録のようだ。ラヴィが参加していることが関係してか、ジョン・コルトレーンを思いっきり意識した曲調となっているけれど、コリアがマッコイ・タイナー風な奏法を取り入れながらいつもとは一味違ったプレイで聴かせてくれるし、クラークのソロとラヴィのアドリブもさすがだし、アドリブは取っていないものの、オブリガート的に弾いているアルトゥラのジャズ的なギターにも好感が持てる。ラストの7曲目「Legacy」はエレクトリックな演奏で締め。エレクトリック・マイルスを連想させる自由度の高い曲調の中、各人ともテンションの高いプレイで聴かせてくれるし、途中に挟み込まれているリフのアンサンブルもバッチリ決まっていて、最高にカッコいい演奏が楽しめる。
ということで想像していたほどエレクトリックな演奏は多くないけれど、このメンバではこれぐらいがちょうどいいし、現代のジャズ・フュージョン情勢にもよくマッチしていると思う。その演奏は文句なしに素晴らしいし(10分以上の曲が4曲もあるのに、全然長くは感じさせないのもさすがとしかいいようがない)、いつものことながらバーニー・カーシュの手による録音もまた最高で、本作は当然ながらの5つ星。もう72歳(1941年生まれ)になるというのに、音楽意欲は全く衰えていないどころかバンドとしての新たな境地を見せているのだから、さすがに大尊敬しているコリア様だけのことはあるね。今年の東京ジャズにもこのザ・ヴィジルで出演するようなので(ベースはフェローから、カリートス・デル・プエルトという人に代わったようだが)、そちらのTV放送も楽しみだ。
評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)
<追記>
Altureとスペルミスしていたので自ブログ検索に引っかからなかったけど、ギターのチャールズ・アルトゥラは「Tigran Hamasyan/Red Hail(09年、別頁あり)」「Stanley Clarke/The Stanley Clarke Band(10年、別頁あり)」にも参加していることが、後になってから判明。なのでこれが初聴きではなかったです。