JD Allen(Ts)
Eldar Djangirov(P)
Dezron Douglas(B)
Jonathan Barber(Ds)
Rec. February 20, 2012, NJ
(Savant SCD2130)
「JD Allen / I Am I Am(08年)」「J.D. Allen Trio/Shine!(09年、別頁あり)」「JD Allen Trio / Victory!(11年、別頁あり)」「JD Allen Trio / The Matador and the Bull(12年、別頁あり)」と、執拗にサックス・トリオ作品が続いていたJDアレンだが、そろそろそういう形態にも飽きたのか、本作にはピアニストとしてエルダー・ジャンギロフが参加しているのが興味深い。エルダーは一昨日聴いたばかりの「Eldar Djangirov Trio / Breakthrough」も滅茶苦茶凄かったけど、これまでは自分のバンドで弾いているのしか聴いたことがなかったので、はたしてサイド参加のときはどのようなプレイをしているのか楽しみだね。また他のメンバーもグレッグ・オーガスト、ルディ・ロイストンから、デズロン・ダグラス、ジョナサン・バーバーに代わっているけれど、ダグラスは説明不要として、これが初聴きのバーバーは本人のサイトが見つかったので、後で目を通しておくとしよう。
全11曲がアレンのオリジナル。
想像していたのとは異なり、サックス・トリオのときよりもさらにフリー指向が強くなっているのが意表を突く。基本的にノンテンポによる自由度の高い演奏は、後期コルトレーン・カルテットあたりとも共通すると思うのだが、各人のプレイが有機的に絡み合っているというわけではなく、またバンドとして全員が一丸となって熱い塊で迫ってくるといったわけでもないので(演奏自体はかなりクール、というか醒めている)、面白みがあまり感じられない。似たような感じのダークな曲調で統一しているのも、即興的な要素の強い演奏なのでこれ以上の変化は望めのないかもしれないけど、聴いているうちに退屈してくるね。そんな中エルダーがどのようなプレイをしているのか気になるところだと思うけど、本人にしてみるとこの手の演奏は新たな方向性を探るための挑戦だったのかもしれないが、実際は自分のバンドのときの十分の一も弾けていないし(左手のブロックコードもなかなか挟み込めないでいる)、周囲の状況を把握しきれずに弾いている様が不安げにも感じられるので、やはりどれだけ才能のある人でも音楽的な得手不得手があるんだなあと感じてしまう。もしこれがジェイソン・モランあたりだと、もっと魅力的なプレイをしていただろうね。それとフリー基調においてのバーバーのインテンポな4ビート・ドラミングにはそれなりに好感が持てるとしても、ダグラスのベースとの調和が取れていなくて、リズムがバラバラに感じてしまうのも気になるところ。これはテンポ出ししているドラムスがいきなりテンポを変えるわけにはいかないので、責任はむしろダグラスの方にあると思うけど、ドラムスのタイミングに合わせるでもなく、かといってサックスやピアノのフレーズの方に絡んでいるわけでもない中途半端なベースを弾いているので、やはりダグラスにとってもこの手の演奏は不得手ということなのかもしれない。アレンだけはいつもと変わらないプレイをしているけれど、バンドとしての演奏には常に散漫な印象が付き纏ってしまい、比較的にいい感じで楽しめるのはテンポがしっかりしている6曲目、同じくテンポがしっかりしていてベースもあたりまえにウォーキングを刻んでいる7曲目、テンポに加えてメロディーもしっかりしているバラード調の10曲目だけという少なさなので、これでは満足できるはずがない。ほとんどの曲が尻切れトンボで終わっているのも、イマイチ感を増長させる要因となっている。
ということで私としてはサックス・トリオ作品の方が好き。メンバー的にもオーガスト、ロイストンの方がアレンとの相性はいいのではと思う。
評価☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)