Eddie Higgins(P)
Scott Hamilton(Ts)
Steve Gilmore(B)
Bill Goodwin(Ds)
Rec. September 26-27,2002,NY (Venus Records TKCV35316)

未開封盤聴き。
本作が吹き込まれる2か月前に、エディ・ヒギンズは同一メンバーで南郷ジャズフェスに出演している。私はその時はアルコールが入っていたことも相まって、あまりにも心地よいサウンドに1曲目が終わったあたりからうたた寝してしまったので、どういうステージだったのかはよく覚えていない(苦笑)。でも一緒に観ていた9歳年上の友人が、「涙が出るほど感動した」と言っていたのはいまだに記憶に残っている。彼は最新のジャズよりも古いジャズの方を好んで聴いているので、そういう雰囲気を醸し出している本メンバーによる演奏は、きっとバッチリとツボに嵌ったのだろう。一口にジャズといっても聴き手の好みは千差万別だからね。ちなみに私はというと、激しいジャズが大好きなのは今更言うまでもないのだが、そんな意味ではエディ・ヒギンズにしてもスコット・ハミルトンにしても、嗜好からは大きく外れている。かといって決して嫌いというわけではなく、たまに聴く分においてはこういうリラックスしたサウンドも全然オーケーである。
ヒギンズがハミルトンと共演するのは「Smoke Gets In Your Eyes(01年録音)」以来本作で2枚目。この後に「My Funny Valentine(04年録音)」もリリースされているのだが、そちらの方はバックのメンバーがフィル・ウッズとの活動が長いスティーブ・ギルモアとビル・グッドウィンから、ジェイ・レオンハートとジョー・アシオーネに代わっている。

全12曲がスタンダード・ナンバー。
1枚目の「Smoke Gets In Your Eyes」よりも本作の方がバンドとしてのまとまりがよく感じるのは、やはりレコーディングの直前に来日して各地を(かな?)回っていたからだろう。1曲目「My Foolish Heart」での、ハミルトンのテナーが雰囲気があって実にいいですなぁ。私はバラード曲でスタートするアルバムはあまり好きではないのだが、こうまでもいい感じに吹かれたのではぐうの音も出ないね。特にサブトーンが最高! ジム・アンダーソンの録音とも相まってテナーが非常に生々しく録れているけれど、やっぱりヴィーナス録音は今よりもこの当時の方があきらかに音が良いね。2曲目の「Russian Lullaby」は少々速めなテンポ設定にして、軽快な演奏になっている。ハミルトンのテナーがますます冴えわたっているのだが、ヒギンズのスウィンギーなピアノもそれに輪をかけて素晴らしい。またリズム隊の二人もソロを取っていて、4人がそれぞれに自分の持ち味を聴かせてくれるのがいいね。とはいえ3曲目はまたバラード。4曲目こそはテンポが速いものの、5曲目はまたまたバラードだったりして、ちょっとバラード曲が多いような気がしないでもない。後半はそれほどではないにしても、これだもの生で観ていても眠くなってくるわけだ(苦笑)。でもまあハミルトンとヒギンズの二人に刺激がタップリのアグレッシブな演奏を望むのも無理な話であって、やっぱりこういうリラックスした感じを前面に打ち出した演奏で正解なのだと思う。ハードな演奏が好きな私でさえも、ギリな線とはいえ最後まで退屈することなく、それなりに楽しむことができたです。
それにしても音が良いよなぁ。ドラムスだけはちょっと奥に引っ込んでいるせいで生気に欠けるけど、それ以外は素晴らしいのひとことに尽きる。この音の良さだけでも十分に楽しめるね。
さてヴィーナス盤の未開封盤聴きは、これにて全てが終了した。アルバム全体としてもあと2枚だけなので(50枚ほどある50~60年代の旧盤や、間違ってダブり買いしてしまったものは除く)、最近は義務感に駆られることもなく、聴きたいときには聴きたいものを聴く、聴きたくないときには何も聴かないという理想的な日々をようやく送れるようになっている。ここまで来るのにけっこう長い道のりだったけど、もしブログをやっていなければ、いまだに大半のものがほったらかし状態なのは確実だっただろう。

評価☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)