ナサニエル・タウンスレーを初めて知ったのは、2004年にリリースされたDVD「Modern Drummer Festival Weekend 2003」でだった。黒人特有のタイトでグルービーなドラミングでありながらも、いざという時のスピーディなプレイ(特にシングル・ストロークが目茶苦茶速い)には圧倒されたものだ。こいつは一体何者だろうと思っていたのだが、もうその頃はすでにリチャード・ボナと一緒にやっていたんだね。その絡みでナベサダともやっていて「Wheel Of Life(03年)」や「One For You -Sadao & Bona Live(06年)」で叩いている。でもなんといってもザヴィヌル・シンジケートでの活躍ぶりが有名でしょうな。(もしかするとこれもボナの口利きがあっての加入だったのかも知れない)今となってはタウンスレーがザヴィヌル・シンジケートの最後のドラマーになってしまったけど、ついこの前まで一緒にやっていたボスが亡くなったのだからその悲しみもひとしおだろう。
シンジケートでのタウンスレーは、「Joe Zawinul & The Zawinul Syndicate/Vienna Nights(別頁あり)」では前任のパコ・セリーあたりと比べるとイマイチ感があったけど、ザヴィヌルとケルンのWDRビッグバンドとの共演作品「Joe Zawinul/Brown Street(別頁あり)」では、見違えるように素晴らしいドラミング(躍動感が漲っている)を披露していて、さすがにドラマーやベーシストにうるさいザヴィヌルが起用しただけのことはあるなあと感心したものだ。でもタウンスレーのドラミングが一番凄いのは実はロニー・プラキシコの2002年録音の「Lonnie Plaxico Group/Live At The Zinc Bar NYC(別頁あり) 」だったりしてね。これを聴くと「Vienna Nights」でさえまだまだ叩き足りないように感じる。まあWR集なので楽曲的に仕方がないけどね。
タウンスレーはまだ若いと思うけど、これからどんな方向に行くのだろう。ライフワークとしてこれからもボナとつるむのもいいけれど、美味しいところはヴィニー・カリウタに持っていかれたりしているので、私の希望としてはプラキシコのときのようにジャズ寄りの人間とやってほしいと願っている。似たようなタイプのロナルド・ブルーナーJrが、オースティン・ペラルタのトリオでガンガン叩きまくっている(スタン・クラークのところでのプレイも凄い!)ようにね。そういうドラミングは黒人の若手に与えられた特権なので、遠慮なしにガンガンいってほしい。間違ってもオマー・ハキムのような方向には行かないように。確かにお金は儲かるかもしれないけど、そのうち居場所がなくなってしまったりして、後になってから苦労するのは自分なんだからね。