Billy Cobham(Ds)
John Abercrombie(G)
Michael Brecker(Ts)
Randy Brecker(Tp)
Glen Ferris(Tb)
Milcho Leviev(Key)
Alex Blake(B)
Rec. July 4&13,1974,Montreux & London

マイケル・ブレッカー追悼盤。
ビリー・コブハムの1974年のモントルー・ミュージック・フェスティバル(今のジャズフェスのことかな?)とロンドンのレインボー・シアターの模様が収録されている。
ランディとマイケルのブレッカー兄弟は、このツアーの後にいよいよブレッカー・ブラザースを結成する。75年にはデビュー作「Brecker Brothers」をレコーディングし、その後の活躍ぶりはみなさんよくご存知だと思うのでここでは割愛するが、わたし的にはまだ2人が有名になる前の、コブハムのセカンド・アルバム「クロスウィンド(74年リリース、別頁あり)」の頃からリアルタイムで知っていたというのが、ささやかな自慢となっている(笑)。
でももっと前の、彼らがフィラデルフィアからNYに進出してきた70年あたりの、ホレス・シルバーのグループだとか、マイク・マイニエリの「ホワイト・エレファント」だとか、コブハムが実質的なリーダー(と思う)の「ドリームス」とかで、すでに2人とも活躍しているんだよね。この辺のところは「ホワイト・エレファント」以外は後追いできていないが、マイケルが逝ってしまった今となっては一番聴いてみたいのがこの時代の演奏なので、気持ちが落ち着いたらゆっくりと探してみようと思っている。
さて「シャバズ」は、まだビリー・コブハムがワンマン性を発揮してギンギンだった頃の、私が勝手に四部作と名付けているやつの最終作品(スペクトラム、クロスウィンド、皆既食、シャバズ)である。コブハムはこの「シャバズ」を境に音楽の路線が聴きやすい方向に変化していった。時代の流れなので仕方がないといえばそれまでだが、もしかするとレコード会社が意図したことだったのかも知れない。でも「ファンキー・サイド・オブ・シングス」以降の作品からは確実にコブハムらしさが薄れていくんだなぁ。まあジョージ・デュークとの双頭バンドとかいろんなオールスターズもののようなスペシャル・プロジェクトの方で忙しくなったというのもあるのだろう。いずれにしても自分のやりたいサウンドを納得がいくまで追求できなくなり、そんな状況に嫌気をさしてコブハムはスイスに移住したのだと思う。
わたし的にはこの「シャバズ」までが最高で、ドラミングはもちろんのこと、手間暇掛けた楽曲がとにかくカッコよかったです。

全4曲。今のCDの時代にしてみれば「えっ、たったの4曲?」って感じだけど、13分台の曲が2曲もあるので聴き応えは十分だ。
いきなりコブハムの超絶ドラムソロからのスタート。やっぱりコブハムはこうでなくてはいけません(笑)。しかもテーマもカウントできないほどにコロコロ変わる変拍子だしね。こんな複雑な曲ばかり吹かされていたのでランディもマイケルも楽譜にメチャクチャ強くなったのか、はたまた楽譜に強い彼らだからこそコブハムがなかなか手放さなかったのかはよく分からないが、細かいフレーズでも一糸乱れぬ鉄壁なアンサンブルの凄さという彼らの特長はこの時点ですでに現れている。そんなことからしても2人がコブハム・バンドで培ったものが、後々の仕事でもおおいに役立っているのは確かだろう。
ランディはワウワウ・ペダルも駆使して自由奔放に吹いているが、それは楽曲面においてはワンマンであっても演奏自体はフロントにやりたい放題やらせるコブハムの度量の広さがあってこそだろうな。
難解なリフをもつ「トーリアン・マタドール」が初演の「スペクトラム」のときよりもだいぶ速いテンポで演奏されているのだが、ここではマイケルがアドリブ部分でハイ・ポジション主体に吹いていて、将来につながる片鱗をちょっとだけだが見せている。でもまだコブハム・バンド時代は兄貴の方にばかり多くスポットが当たっていて、マイケルはあまり出る幕がなかったんだよな。私なんかも「Brecker Brothers」を聴いてから初めてマイケルが本当に凄い奴だということが分かった口だ。
と、ランディとマイケルのことを主体に書いているが、このアルバムの主役はなんといってもコブハムで、そのパワーとスピードには圧倒されっぱなしで、ドラミングだけをとると四部作の中では一番強力。
ジョンアバは相変わらずヘンテコリン(いい意味で)なギターを弾いているし、ミルチョ・レヴィエフの参加はわたし的には七不思議のひとつとなっている。