Jazz & Drummer

ジャズ・フュージョンの新譜や好きなドラマーのことなど音楽98%、感じたままに書いている個人ブログです。

カテゴリ:Jazz / FusionのCD > 新譜

Bill Charlap Trio / Uptown Downtown

Bill Charlap (P)
Peter Washington (B)
Kenny Washington (Ds)
Rec. March 13-16, 2017, NY
(Impulse 06025578 1032)

前作「Bill Charlap Trio / Notes from New York(16年、別頁あり)」等と同様、ピーター・ワシントン、ケニー・ワシントンとの共演なので、やっていることは聴かなくても分かるのだが、それでもビル・チャーラップのリーダー作がリリースされるとついつい買ってしまうのは、オーソドックスなピアノトリオとして理想的な演奏をしているからに他ならない。普段はもっとコンテンポラリーなジャズを好んで聴いているけれど、そんな中でこういうオーソドックスな演奏を聴くとホッとするんだよね。あとはどういう曲を取り上げているのか、テンポ的にはどうなのかということだけど、その辺のところが本作ではどうなっているのか楽しみ。ちなみに両ワシントンは、近作としては「Lee Konitz / frescalalto(17年、別頁あり)」でも一緒だった。

ジェリー・マリガンの「Curtains」、トミー・ウォルフの「Spring Can Really Hang You Up The Most」、スティーヴン・ソンドハイムの「Uptown, Downtown」、アイシャム・ジョーンズの「The One I Love Belongs To Smebody Else」、ミッシェル・ルグランの「I'm All Smiles I'm All Smiles」、リチャード・ロジャースの「There's A Small Hotel」、ジジ・グライスの「Satellite」、ジム・ホールの「Bon Ami」、デューク・エリントンの「Sophisticated Lady」で全9曲。
どの曲をとってもチャーラップらしい、音の強弱や一音一音を大事にしながらのスウィンギーなプレイが心地いい。4ビートの曲が続いているとはいえ、テンポ的な工夫もそれなりに施されていて、ゆったりめの曲が多めではあるけれど速めの曲とのバランスも絶妙なので、聴いていて退屈するようなことは全くなし。トリオとしての演奏には特に不満はないのだが、しいていえばピーターのベースソロの場面はもっと多くてもよかったかも。ウォーキングだけでもその魅力は十分に伝わってくるにしても、ソロの上手さはまた格別なので、できればたっぷりと聴いてみたかった。それはケニーにもいえることだけど、こちらの方は選曲(ドラムソロには不向きな曲が多い)との兼ね合いもあるので致し方ないだろう。またチャーラップの楽曲に対するアプローチの仕方も、どれもが同じような感じになってしまっているのが気にならなくもないけれど、これこそが彼の持ち味でもあるわけなので、いまさら変える必要はないだろう。ベニー・グリーンのトリオあたりとはまた一味違ったオーソドックスな演奏で楽しませてくれるし、「Sophisticated Lady」以外は曲名や作曲者を知らなくても、聴けば「ああこの曲か」と分かるようなアンノウン・スタンダード的な曲を多く取り上げている選曲のセンスにも好感が持てる。その中の「Bon Ami」はチャーラップの過去盤「Bill Charlap Trio / Distant Star(97年、ドラムスはビル・スチュワート)」にも収録されているのが調べている段階で分かったので、そちらと聴き比べてみるのも面白いかもしれない。
今に始まったことではないけれど、本作でもチャーラップの音楽性が顕著に現れているトリオ演奏が堪能できるし、録音(エンジニアはジェームス・ファーバー)も、ベースがピーターのわりには柔らかめに録れていることを除いては良好なのだが、同じオーソドックスな演奏であっても、曲によってはガツンとくる方が私好みなので、次回作ではそういうのもやってくれることを願っている。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)


Uptown, Downtown
Bill Charlap Trio
Imports
2017-09-15

  

--EDIT--

Ralph Bowen / Ralph Bowen

Ralph Bowen (Ts)
Jim Ridl (P, Rhodes)
Kenny Davis (B)
Cliff Almond (Ds)
Rec. September 25, 2016, NY
(Posi-Tone Records PR8172)

Ralph Bowen/Dedicated(09年)」「Ralph Bowen/Due Reverence(10年)」「Ralph Bowen / Power Play(11年)」「Ralph Bowen / Total Eclipse(12年)」「Ralph Bowen / Standard Deviation(14年)」(各別頁あり)に次ぐラルフ・ボウエンのPosi-Toneからの6枚目だけど、今回は心機一転の意味合いなのか、アルバムタイトルが名前だけになっているのが興味深い。メンバーも前2作品に参加していたケニー・デイヴィス以外は、デイヴ・リーブマンのビッグバンド作品「The Dave Liebman Big Band/Live As Always(10年、別頁あり)」「Dave Liebman Big Band / A Tribute To Wayne Shorter(14年)」でしか聴いたことのないジム・リドル、「Michel Camilo Big Band / Caribe(10年、別頁あり)」等のミシェル・カミロ諸作品や「Abstract Logix Live! / The New Universe Music Festival 2010(11年、別頁あり)」といった、純ジャズよりもフュージョン系のドラマーとしてのイメージが強いクリフ・アーモンドなので、はたしてどういうことになっているのか楽しみだ。

ボウエン曲が7曲(うち6曲は「The Phylogeny Suite」と題した組曲)、デイヴィス曲が1曲、リーブマンの「Picadilly Lily」、マッコイ・タイナーの「Search for Peace」で全10曲。
ピアノだけではなくエレピもクレジットされているし、ドラマーがアーモンドなので、もしかすると8、16ビート系の演奏がメインとなっているのかなとも思ったけれど、曲によってはそういう場面展開があるし、ブルース曲の7曲目「A Cast of Crabs」は楽曲自体が現代版シャッフルといった感じだしデイヴィスがエレべを弾いているにしても、さすがにボウエンだけあって基本的にはきちんと4ビートで勝負をかけているのにまずはホッとする。その演奏もアーモンドが完全にジャズドラマーになり切っていて、アントニオ・サンチェスばりのアグレッシブなドラミングで聴かせてくれるのだから嬉しい限り。ソロの場面もたっぷりと用意されていて、その上手さをたっぷりと見せつけてくれる。またエレピは3曲だけに留めて、アコピをメインに弾いているリドルのプレイも上々。私好みのモーダルなピアニストといったわけではないけれど、特にアコピのアドリブには教科書的ではない独自の個性が感じられて好感が持てる。それに加えてデイヴィスのガッチリと土台を支えているベースが、バンドとしての推進力にも繋がっているね。でもなんといっても一番の聴きどころはボウエンのテナー。これまでと奏法自体は変わらないにしても、現代的なフレージングのカッコよさといい、高域になっても線が細くならないテナーの音質といい、最高にいい感じで楽しませてくれる。曲作りに関しても2曲目「A Rookery of Ravens」から7曲目までは組曲となっているけれど、何かのストーリーを感じさせるというよりは、それぞれが独立した曲調となっているのがむしろ好ましい。
リーダー作にはハズレなしのボウエンではあるけれど、本作もメンバーに有名どころが揃っているといったわけではないながらも実にいいね。演奏だけではなく、各楽器が温かみのある音色で録れている録音(エンジニアはNick O' Toole)も良好だ。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)


Ralph Bowen
Ralph Bowen
Imports
2017-08-04

  

--EDIT--

Gary Peacock Trio / Tangents

Marc Copland (P)
Gary Peacock (B)
Joey Baron (Ds)
Rec. May 2016, Auditorio Stelio Molo RSI, Lugano, Switzerland
(ECM 2533)

前作「Gary Peacock Trio / Now This(15年、別頁あり)」と同一メンバー(マーク・コープランド、ジョーイ・バロン)によるゲイリー・ピーコックの新作だけど、今回はスタジオではなく、スイスのAuditorio Stelio Molo RSIというコンサートホールでレコーディングされているのが興味深い。おそらくライブ盤ではなく、このホールの響きが気に入ってのレコーディングだと思うけど、はたしてどのような音で録れているのか、演奏と同様に楽しみだ。

ピーコック曲が5曲、コープランド曲が1曲、バロン曲が2曲、3人の共作が1曲、Alex Northの「Spartacus」、マイルスの「Blue In Green」で全11曲。
ピーコックのベースを中心として、3人が対話をしているような感じの、即興的な要素が強い演奏が展開されている。ほとんどの曲は楽譜に簡単なモチーフしか書かれていないと思われるのだが、そんな中での各人がお互いの音に反応し合いながらの緊張感のあるプレイが素晴らしい。ただし1曲の演奏時間が短めなのは気になるところ。半即興的な演奏の場合はこれ以上のことはやりようがないのかもしれないけれど、こちらが曲に入り込む前に終わってしまうような曲もあったりするので、できればもっと長く演奏してほしかった。それと静的な曲が多いのも、聴く前から予想していたとはいえ、「Gary Peacock Trio / Now This」の方はもう少し動的だったような気がするので、どうかなと思う。同じ静的な演奏であっても、既成曲の5曲目「Spartacus」や7曲目「Blue In Green」の方がよりよく感じるので、できればこういうちゃんとした曲をもう何曲か増やして、その分半即興曲を減らしてほしかった。
とあまりいいことは書いてないけど、録音(エンジニアはStefano Amerio)に関しては各楽器が自然な音で録れていて、なおかつドラムスにはコンサートホール特有の残響音も伴っているのが素敵だね。ピーコックのベースも非常に鮮明に録れていて、私としてはこの音の良さ(他のECM作品とも一味違う)だけでも満足してしまった。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)


Tangents
Gary -Trio- Peacock
Ecm Records
2017-09-08

  

--EDIT--

Yelsna Eckemoff Quintet / In the Shadow of a Cloud

Yelena Eckemoff (P)
Chris Potter (Ts, Ss, Fl, Bass-Cl)
Adam Rogers (G)
Drew Gress (B)
Gerald Cleaver (Ds)
Rec. December 20-21, 2016, NYC
(L & H Production L&Hcd806151-25)

バックのメンバー買い。リーダーのエレーナ・エケモフ(モスクワ出身)を聴くのはこれが初めてと思っていたけれど、自ブログで検索したらアリルド・アンデルセン、ピーター・アースキンとのトリオ作品「Yelena Eckemoff Trio / Glass Song(13年、別頁あり)」も所有しているのが見つかった。そちらは静的な演奏がメインだったのだが、本作ではクリス・ポッター、アダム・ロジャース、ドリュー・グレス、ジェラルド・クリーヴァーとの共演なので、エケモフの音楽性自体は変わらないと思うけど、また一味違った演奏が堪能できそうだ。

全14曲(CD1が7曲、CD2が7曲)がエケモフのオリジナル。
CD1は比較的ゆったり目のテンポの非4ビート曲が主体ではあるけれど、各人が持ち味をきちんと発揮しているので、静的な印象は受けない。メンバーの中ではポッターが曲により楽器を持ち替えながら大活躍。またロジャースも素敵なプレイで聴かせてくれるのだが、この2人が参加しているからといってもChris Potter Underground的ではないのが、プロとして当然のことではあるけど素晴らしい。2人ともエケモフの音楽性に完全に同調したプレイをしているし、リズム隊のグレスとクリーヴァーも同様なおかげで、どの曲をとってもいい感じの演奏を楽しむことができる。曲によってはエケモフがアドリブらしいアドリブを取っていなくて、バッキングの他にはポッターやロジャースのアドリブとの同時進行でオブリガート的に弾いているだけに留まったりもしているけれど、そういう自分の能力の限界を知っているからこその奥ゆかしいプレイも、他のピアニストとは異なった個性へと繋がっていて好感が持てる。ポッターやロジャースが休んでいて演奏の雰囲気を変えている曲があるとはいえ、曲調自体はどれもが似通っているので、この調子でトータルで97分もやられてはどんなに演奏内容が良くても退屈するだろうと思っていたら、CD2の方は4ビート曲を主体としながら、CD1よりもいい意味で煩めの曲が多く収録されているのでホッとした。
せっかくこれだけのメンバーが揃っているのだから、もっとエネルギッシュな演奏があってもよかったのではと思うけど、少なくとも「Yelena Eckemoff Trio / Glass Song」よりは私好みの演奏が楽しめたわけなので、これでよしとしよう。本作は録音(エンジニアはジェームス・ファーバー)も、温かみのある各楽器の大きめな音像には実在感を感じるし、バランスも完璧で、ファーバー録音としては久しぶりに満足のいくサウンドが堪能できた。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)


In The Shadow Of A Cloud (2CD)
Yelena Eckemoff
L
2017-08-30

  

--EDIT--

Tommy Smith / Embodying the Light

Tommy Smith (Ts)
Pete Johnstone (P)
Calum Gourlay (B)
Sebastiaan de Krom (Ds)
Rec. April 2017, Scotland
(Spartacus Records STS025)

昔はバックのメンバーに釣られて買っていたトミー・スミスを聴くのは「Tommy Smith Sextet/Evolution(05年、別頁あり)」以来。本人のサイトを見ると、その間にもアルバムはコンスタントにリリースされているけれど、メンバーにそそられなかったりビッグバンド作品だったりして、自分の好みの方向からは遠ざかっていたところにジョン・コルトレーンに捧げた本作が登場したので、興味津々買ってみた。イギリスのジャズには疎いので、「Kit Downes Trio/Golden(09年、別頁あり)」に参加していたベースのカラム・グーレイ(?、1986年生まれ)以外のピート・ジョンストンとセバスチャン・デ・クロムは知らない人だけど(おそらく3人とも普段からトミーと一緒にやっているのだろう)、経歴等はいちいち調べるのも面倒なので割愛する。

スミス曲が3曲、コルトレーンの「Dear Lord」「Naima」「Resolution」「The Father, the Son, and the Holy Ghost」「Transition」、ガーシュウィンの「Summertime」で全9曲。
近年のコルトレーン的な演奏としては、「Doug Webb / Another Scene(14年、別頁あり)」や「Ondřej Štveráček Quartet feat. Gene Jackson / Sketches(17年、別頁あり)」が愛聴盤となっているけれど、本作も楽曲自体がコルトレーンの曲を取り上げていることもあって実にいいね。コルトレーンのスタイルをマイケル・ブレッカー風の現代的な解釈で吹いているスミスといい、ハンコック的なモーダルさとアウトのしかたが特徴的なジョンストンといい、「Impressions」のコード進行をパクったと思われるオリジナルの1曲目「Transformation」からして、目茶苦茶カッコいいことになっている。もうこの1曲だけでも買ってよかったという気分になっているのに、さらりとした演奏の2曲目「Dear Lord」もまたコルトレーンをリスペクトしつつ都会的なセンスで聴かせてくれるし、オリジナルの3曲目「Enbodying the Light」も、「Bessie's Blues」とどこが違うのというぐらいに、コード進行だけではなくテーマまでよく似た曲となっているのだから、コルトレーン好きとしては何ともたまらない。この曲ではグーレイもベースソロで大活躍しているし、続くジョンストンもハンコックにチック・コリア的なものまで加味しながら1曲目以上にカッコよく弾きまくっているし、その後のスミスもコルトレーンが乗り移ったかのように容赦なく吹きまくっているのだから、完全にノックアウト。更には「Naima」「Resolution」「The Father, the Son, and the Holy Ghost」「Summertime(アレンジが実にカッコいい)」「Embodyin the Darkness(オリジナル曲)」「Transition」が怒涛のように続いていて、しかもどの曲をとっても非常に聴き応えのある素晴らしい演奏となっているのだから(ドラムスのクロムもパンチの効いたプレイが魅力的)、こんなに嬉しいことはない。昔のスミスはどことなく線が細い印象だったけど、私が聴いていなかった12年間で見事な変貌を遂げているね。本演奏ではブレッカーと比較しても遜色ないテクニックと、自信に満ち溢れている情熱的なプレイで、至福のひとときを味あわせてくれる。
ということで演奏には文句のつけようがないし、録音(エンジニアはStuart Hamilton)も各楽器の音質、バランス共に良好で、本作は当然ながらの5つ星。スミスと同様に感銘を受けたジョンストンにも、これからは注目するとしよう。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)


EMBODYING THE LIGHT
TOMMY SMITH
SPART
2017-07-28

  

--EDIT--

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