Branford Marsalis / The Secret Between the Shadow and the Soul

Branford Marsalis (Ts, Ss)
Joey Calderazzo (P)
Eric Revis (B)
Justin Faulkner (Ds)

Produced by Branford Marsalis
Recorded ana mixed by Rob "Wacko!" Hunter
Recorded May 28-30, 2018 at Alexander Theatre at Monash University, Clayton, VIC Australia
Mixed August 3-10, 29-31, 2018 at Studio in the Country, Durham, NC
Mastered September 28, 2018 by Greg Calbi at Sterling Sound, Edgewater, NJ
Art Direction and Design by Steven Jurgensmeyer
Photography by Eric Ryan Anderson
(Marsalis Music 19075914032)

1. Dance of the Evil Toys (Eric Revis) 8:23
2. Conversation Among the Ruins (Joey Calderazzo) 8:46
3. Snake Hip Waltz (Andrew Hill) 5:51
4. Cianna (Joey Calderazzo) 7:32
5. Nilaste (Eric Revis) 10:15
6. Life Filtering from the Water Flowers (Branford Marsalis) 9:00
7. The Windup (Keith Jarrett) 12:30

ドラムがジェフ・ワッツからジャスティン・フォークナーに代わってからのブランフォード・マルサリス・カルテットのアルバムは、「Branford Marsalis Quartet / Four MFs Playin' Tunes(12年、別頁あり)」「Branford Marsalis Quartet with Special Guest Kurt Elling / Upward Spiral(16年、別頁あり)」に次ぎ、本作で3枚目ということになるのかな。その演奏は早くも1曲目「Dance of the Evil Toys」から非常にエネルギッシュかつアグレッシブな展開(フリーの一歩手前まで行っている)となっていて、実にいい塩梅。かと思うと2曲目「Conversation Among the Ruins」は物悲しさを覚える美メロのバラードだし、3拍子の3曲目「Snake Hip Waltz」はユニークさが感じられるメロディーが特徴的(アドリブからはこれまたかなりアグレッシブ)、4曲目「Cianna」はルンバ調、5曲目「Nilaste」はルバートでスタートする自由度の高い2小節進行(同じフレーズを繰り返しているベースラインが不気味)、6曲目「Life Filtering from the Water Flowers 」はフリー調(というかルバート)でダイナミックに盛り上がるバラード、7曲目はこれまでのダークな雰囲気から一転しての明るめな曲調で、「Jan Garbarek, Keith Jarrett, Palle Danielsson, Jon Christensen / Belonging(73年)」に収録されている懐かしの「The Windup」(セカンドライン的なビートがアドリブからは4ビートにチェンジ)と、曲調的にはけっこうバラエティに富んでいるけれど、当然のことながら演奏の統一感はきちんと取れているし、コマーシャルな要素は一切ない、真摯にジャズに取り組んでいる姿勢も窺えて、流石にブランフォードのカルテットは他のバントとは一味も二味も違うなあと思わせてくれる。もちろんプレイ的にも、ブランフォードは曲によりテナーとソプラノを持ち替えながら、コルトレーンに通じる精神性の強い演奏で聴かせてくれるし(場面によっては歌心もたっぷり)、ジョーイ・カルデラッツォのハンコック、コリア、ジャレット等のいいとこ取りした感じのピアノも、あまりのカッコよさに聴き惚れるほど。また土台をガッチリと支えているエリック・レヴィスの骨太なベースも、口ずさみながらのソロを含めて素敵だし、フォークナーもここぞというときには前任のワッツ以上にパワー全開のエネルギッシュなドラミングで攻めまくっていて、各人がお互いにインスパイアされながら、自分の能力以上のものを出し切っている感のある本演奏には圧倒させられる。特に「The Windup」での鬼気迫る演奏には完全にノックアウトされてしまった。
フォークナー入りの3枚の中では本作が最高だし、録音もドラムだけはホールトーン的なものが加味されているのでオフ気味に聴こえるものの、各楽器の音質、バランス共に上々で、当然ながらの5つ星。これだけ良いとなると、先日聴い「Chris Potter / Circuits(19年、別頁あり)」と同様、今年の私的ベストアルバムの上位に食い込むのは確実だろう。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)


Secret Between the..
Branford -Quartet- Marsalis
Okeh
2019-03-01