Vincent Herring / Hard Times

Vincent Herring (As, Ss)
Cyrus Chestnut (P, Rhodes)
Yasushi Nakamura (B)
Carl Allen (Ds)
Nicolas Bearde (Vo) 2, 3, 5
Russell Malone (G) 1, 2, 7
Steve Turre (Tb) except 5, 6, 7
Brad Mason (Tp) except 5, 6, 7, 10, 11
Sam Dillon (Ts) except 5, 6, 7, 10, 11 
Rec. May 30, 2017, NYC
(Smoke Sessions Records SSR1708)

ヴィンセント・ハーリングのアルバムを買うのは「Vincent Herring/Ends and Means(06年、別頁あり)」以来だけど、その間に小林陽一絡みのバンドで生で2回観ているし(そのうちの「ヴィンセント・ハーリング・カルテット(2006.7.29)」はライブレポートあり)、「Cedar Walton/One Flight Down(06年)」「Louis Hayes/Maximum Firepower(06年)」「Carl Allen & Rodney Whitaker/Work To Do(09年)」「Mingus Big Band / Live at Jazz Standard(10年)」「Mike LeDonne & The Groover Quartet / That Feelin'(16年)」(各別頁あり)でも耳にしているので、久しぶりという感じは全くしない。本作ではサイラス・チェスナット、中村泰士、カール・アレンとの共演に加えて、曲によってはラッセル・マローンやスティーヴ・トゥーレ等が参加しているのが興味深いのだが、ハーリングがこれほどの大人数でレコーディングしているリーダー作は聴いた記憶がないので、はたしてどういうことになっているのか楽しみだ。

ハーリング曲が1曲、アレン曲が1曲、ジョン・ハンディの「Hard Work」、ビル・ウィザースの「Use Me」、ガーシュウィンの「Summertime」「Embraseable You」、ポール・ミッチェルの「Hard Times」、マルグリュー・ミラーの「Eastern Joy Dance」、Irene Higginbotham, Ervin Drake, Dan Fisherの「Good Morning Heartache」、ジョージ・コールマンの「Amsterdam After Dark」、ドナルド・ブラウンの「Phineas」で全11曲。
1曲目「Hard Work」は非常に気持ちいいハードバップ・サウンド。何の変哲もないオーソドックスな演奏ではあるけれど、こういうのを聴くとホッとする。男性ヴォーカル入りの2曲目「Use Me」は16ビートのソウルフルな演奏となっているのが、ハーリングにしては珍しい気がするけれど、こういう曲調であっても各人がノリノリで、特にマローンは時たま自分のアルバムでも披露しているようなロック調のギタープレイをしているのが面白いし、アレンもまたいまどきの若者には負けていられないと思ったのか、サイドスネアを用意するほどの意気込みで叩いている(別の曲ではエフェクトシンバルも使用)のが微笑ましい。同じくヴォーカル入りの3曲目「Summertime」も似たような感じの16ビート演奏だけど、今度はチェスナットがエレピを弾いているのと、ハーリングがソプラノを吹いているのがいい塩梅。演奏的にはこれまでのハーリングのアルバムとはずいぶん異なる印象を受けるけど、それぞれがベテランながらも少しでもナウい感じを出そうと、アレンジに合わせて奏法を変えている姿勢に好感が持てる。ハードバピッシュな4ビートの4曲目「Hard Times」では、ハーリングのコブシを効かせながらのテーマメロディが素敵。アドリブに入ってからも快調に飛ばしているし、続くチェスナット、トゥーレ、ブラッド・メイソンのアドリブも上々で、これまたいい感じで聴かせてくれる。ヴォーカル入りの5曲目「Embraseable You」はボサノヴァタッチ、6曲目「Eastern Joy Dance」は「タンタ・ンタタ・ンタン・タンン」のアフロ調(中村のベースソロがなかなかの聴きもの)、7曲目「The Sun Will Rise Again」(ハーリングのオリジナル)は「カツカツ」した16ビート寄りの8ビートといった感じで曲は進行していくけれど(以降の曲は4ビートがメイン)、どの曲をとっても各人がいい仕事をしているおかげで、終始ノリノリで楽しむことができた。
ハーリングはビッグトーンで豪快に吹きまくるイメージだったけど、本作ではアドリブスペースを他の人たちにも多く与えているのに加えて、肩の力も幾分抜きながら吹いているように感じられるのが、これまでとは異なる点。それが功を奏して、トータル約70分の長丁場ながらも聴き疲れするようなことは全くないし、録音(エンジニアはChris Allen)もスピーカーの前にせり出してくる各楽器が、やっている音楽にもよくマッチした逞しいながらも温かみのある音色で録れていて、演奏だけではなく音の良さでも満足させてくれる。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)


Hard Times
Vincent Herring
Smoke Sessions Rec
2017-11-03