Ralph Bowen / Ralph Bowen

Ralph Bowen (Ts)
Jim Ridl (P, Rhodes)
Kenny Davis (B)
Cliff Almond (Ds)
Rec. September 25, 2016, NY
(Posi-Tone Records PR8172)

Ralph Bowen/Dedicated(09年)」「Ralph Bowen/Due Reverence(10年)」「Ralph Bowen / Power Play(11年)」「Ralph Bowen / Total Eclipse(12年)」「Ralph Bowen / Standard Deviation(14年)」(各別頁あり)に次ぐラルフ・ボウエンのPosi-Toneからの6枚目だけど、今回は心機一転の意味合いなのか、アルバムタイトルが名前だけになっているのが興味深い。メンバーも前2作品に参加していたケニー・デイヴィス以外は、デイヴ・リーブマンのビッグバンド作品「The Dave Liebman Big Band/Live As Always(10年、別頁あり)」「Dave Liebman Big Band / A Tribute To Wayne Shorter(14年)」でしか聴いたことのないジム・リドル、「Michel Camilo Big Band / Caribe(10年、別頁あり)」等のミシェル・カミロ諸作品や「Abstract Logix Live! / The New Universe Music Festival 2010(11年、別頁あり)」といった、純ジャズよりもフュージョン系のドラマーとしてのイメージが強いクリフ・アーモンドなので、はたしてどういうことになっているのか楽しみだ。

ボウエン曲が7曲(うち6曲は「The Phylogeny Suite」と題した組曲)、デイヴィス曲が1曲、リーブマンの「Picadilly Lily」、マッコイ・タイナーの「Search for Peace」で全10曲。
ピアノだけではなくエレピもクレジットされているし、ドラマーがアーモンドなので、もしかすると8、16ビート系の演奏がメインとなっているのかなとも思ったけれど、曲によってはそういう場面展開があるし、ブルース曲の7曲目「A Cast of Crabs」は楽曲自体が現代版シャッフルといった感じだしデイヴィスがエレべを弾いているにしても、さすがにボウエンだけあって基本的にはきちんと4ビートで勝負をかけているのにまずはホッとする。その演奏もアーモンドが完全にジャズドラマーになり切っていて、アントニオ・サンチェスばりのアグレッシブなドラミングで聴かせてくれるのだから嬉しい限り。ソロの場面もたっぷりと用意されていて、その上手さをたっぷりと見せつけてくれる。またエレピは3曲だけに留めて、アコピをメインに弾いているリドルのプレイも上々。私好みのモーダルなピアニストといったわけではないけれど、特にアコピのアドリブには教科書的ではない独自の個性が感じられて好感が持てる。それに加えてデイヴィスのガッチリと土台を支えているベースが、バンドとしての推進力にも繋がっているね。でもなんといっても一番の聴きどころはボウエンのテナー。これまでと奏法自体は変わらないにしても、現代的なフレージングのカッコよさといい、高域になっても線が細くならないテナーの音質といい、最高にいい感じで楽しませてくれる。曲作りに関しても2曲目「A Rookery of Ravens」から7曲目までは組曲となっているけれど、何かのストーリーを感じさせるというよりは、それぞれが独立した曲調となっているのがむしろ好ましい。
リーダー作にはハズレなしのボウエンではあるけれど、本作もメンバーに有名どころが揃っているといったわけではないながらも実にいいね。演奏だけではなく、各楽器が温かみのある音色で録れている録音(エンジニアはNick O' Toole)も良好だ。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)


Ralph Bowen
Ralph Bowen
Imports
2017-08-04