JD Allen / Radio Flyer

JD Allen (Ts)
Liberty Ellman (G)
Gregg August (B)
Rudy Royston (Ds)
Rec. January 2, 2017, NJ
(Savant SCD2162)

DJアレンはグレッグ・オーガストとルディ・ロイストンのことをどれだけ好きなのか、共演盤は「J.D. Allen/I Am I Am (08年)」「J.D. Allen Trio/Shine!(09年、別頁あり)」「JD Allen Trio / Victory!(11年、別頁あり)」「JD Allen Trio / The Matador and the Bull(12年、別頁あり)」「JD Allen / Graffiti(15年、別頁あり)」「JD Allen / Americana: Musings on Jazz and Blues(16年、別頁あり)」に次いでこれが7枚目だけれど、これまでのサックストリオ作品とは異なり、本作ではギタリストのリバティ・エルマンが参加しているのが興味深い。これが初聴きのエルマンは、Wikipediaによると1971年ロンドン生まれのアメリカ育ち。90年代にM-Baseシーンに参加してからは尖がり系のミュージシャンとの共演が多いようなので、強者揃いのアレン・トリオとの共演は当然の成り行きだったのかもしれない。

全7曲がアレンのオリジナル。
曲によってはフリーな展開もありの4ビート主体の演奏はアレン・トリオの得意とするところだけど、そこにギターも加わっているし、フリー的な場面も増えているので、これまでとはまた一味違った演奏が堪能できる。エルマンのギターはミック・グッドリックあたりによく似ているといえば分かりやすいかな。思っていたよりも奏法もギターの音色もオーソドックスだけど、場面によってはビルフリ的なエフェクティブなプレイもしているので、いろいろな引き出しを持っている人なのかもしれない。そんなエルマンがトリオにきっちりと溶け込んでいるおかげで、自由度が高いながらも調和のとれた演奏を楽しむことができるし、エルマンの参加によって、特にロイストンがますますアグレッシブなプレイをしていて実にいい塩梅。近年のロイストンはあちこちのバンドから引っ張りだこだけど、制約の少ない本トリオ(今回はカルテットだが)でのドラミングはまた格別で、どのような手順で叩いているのか分析不能なスピーディーかつパワフルなプレイに拍車がかかっていて圧倒させられる。それと比べるとアレンとオーガストは普段と変わらない気がするけれど、全員がブチ切れてしまっては聴く方も疲れてしまうので、これぐらいでちょうどいいだろう。バラード調の曲も含めて聴き応えのあるハードな演奏が続いているのだが、その中でもロイストンがソロを取っている4ビート曲の6曲目「Daedalus」が特に気に入った。
前作「JD Allen / Americana: Musings on Jazz and Blues」では趣向を変えて南部のジャズやブルースをテーマにしていたアレンだけど、マンネリにならないためにはそういう音楽的なことよりも、メンバーを増やした方が手っ取り早いわけで、結果的にエルマンの参加は大成功。本作は録音(エンジニアはTom Tedesco)も、いかにもジャズらしい汗が感じられる音で録れていて、各楽器の音質、バランス共に上々だね。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)


ALLEN, JD
JD ALLEN
RADIO FLYER
2017-07-07