Steve Nelson / Brothers Under The Sun

Steve Nelson (Vib)
Danny Grissett (P)
Peter Washington (B)
Lewis Nash (Ds)
Rec. December 9, 2016, NY
(HighNote Records HCD7294)

デイヴ・ホランドの「Dave Holland Big Band/Overtime(05年)」「Dave Holland Quintet/Critical Mass(06年)」「Dave Holland Octet/Pathways(10年)」(各別頁あり)でのプレイが記憶に新しいスティーヴ・ネルソンのリーダー作を買うのは「Steve Nelson / New Beginnings(99年)」以来18年ぶりだけど、その間にも「Steve Nelson / Sound-Effect(07年)」というのがリリースされていたんだね。それとかもっと古い「Steve Nelson Quartet / Communications(90年?)」には盟友だった故マルグリュー・ミラーが参加しているけれど、本作はそんなミラーへの追悼盤となっているようだ。メンバーのピーター・ワシントンとルイス・ナッシュは上記「Sound-Effect」の他にも、「Lewis Nash/Stompin' At The Savoy(05年、別頁あり)」で共演。ワシントンとは「Renee Rosnes/Manhattan Rain(10年)」「Renee Rosnes / Written in the Rocks(16年)」「The Power Quintet / High Art(16年)」(各別頁あり)でも共演している間柄だけど、そこに大好きなダニー・グリセットも加わって、はたしてどういうことになっているのか興味深い。

ネルソン曲が1曲、グリセット曲が1曲、ミラーの「Eastern Joy Dance」「Grew's Tune」「Soul-Leo」「Samba D'Blue」「For Those Who Do」「New Wheels」、スタンダードの「The More I See You」「It Never Entered My Mind」で全10曲。
マッコイ・タイナーの影響を受けているミラーの楽曲集ということで、男性的なガッチリした曲が多い中でのミルト・ジャクソンとボビー・ハッチャーソンを足して2で割ったような感じのネルソンのハートフルなプレイが心に染み渡る。またグリセットも自分の持ち味にミラー的な雰囲気も加味しながら、その代役を見事に果たしているね。この2人のプレイだけでも十分に楽しめるというのに、ワシントンとナッシュもまた黄金のリズム隊に相応しい素晴らしいバッキングをしているのだから、何ともたまらない。特にナッシュは先日聴いたばかりの「Bobby Watson / Made in America(17年、別頁あり)」とは比べものにならないほどに生き生きとしたプレイをしているのだから嬉しくなってしまう。ミディアムテンポの4ビートがメインとなっている楽曲はどれもがみんないいのだが、その中でもネルソンとグリセットが4バースのアドリブを取っていて、その後にはワシントンとナッシュのソロも続いているミディアム・ファーストの9曲目「New Wheels」が特に気に入った。ミラー曲の中にさり気なく溶け込ませているスタンダードの1曲目「The More I See You」や5曲目「It Never Entered My Mind」、ネルソン曲の7曲目「Brothers Under The Sun」も実にいい雰囲気だし、予めミラーを想定して作られたグリセット曲の「Melody for Mulgrew」もミラー以上にミラー的な曲調だったりして、オーソドックスを絵に描いたような演奏ではあるけれど、各人がきちんと本領を発揮しているおかげで、どの曲をとってもノリノリで楽しむことができた。
そんな演奏に特に不満は見当たらないし、録音(エンジニアはMitch Yuspeh)もまたドラムの音だけはいつものナッシュとは異なっているような気がするものの、暖かみを伴いながらの各楽器の音(音像は大きめ)がスピーカーの前にせり出してきて上々だね。本作はこのジャズ的な音の良さだけでも楽しめてしまう。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)


Brothers Under the Sun
Steve Nelson
Highnote
2017-04-14