Chris Potter / The Dreamer is the Dream

Chris Potter (Ts, Ss, Bass-Cl, Cl, Fl, Itimba, Samples)
David Virelles (P, Celeste)
Joe Martin (B)
Marcus Gilmore (Ds, Per)
Rec. June 2016, NY
(ECM 2519)

クリス・ポッターの「Chris Potter / The Sirens(13年、別頁あり)」「Chris Potter Underground Orchestra / Imaginary Cities(15年、別頁あり)」に次ぐ、ECMからの3枚目。今回はクリス・ポッター・アンダーグラウンドからの長い付き合いのクレイグ・タボーンが抜けて、「Chris Potter / The Sirens」に第二ピアニスト的に参加していたダヴィ・ビレージェスが昇格しているけれど、新たに加わったマット・ペンマン、マーカス・ギルモアのそそられるリズム隊とで、はたしてどういうことになっているのか楽しみだ。

全6曲がポッターのオリジナル。
1曲目「Heart in Hand」はECMのレーベルカラーに合わせた大人しめの演奏なので、雰囲気的にはコルトレーンの「Ballads」に通じるものがあるとはいえ少々がっかりするのだが、非常にリズミカルで躍動感もある6拍子の2曲目「Ilimba」(楽曲自体が目茶苦茶カッコいい)では、ポッターは当然のことながらビレージェスやギルモアのソロにも大きくスポットが当たっていて、そんな不満もどこかに吹き飛ばせてくれる。やっぱりこのメンバーにはこれぐらいのことをやってもらわないと面白くないのだが、こういう曲があるからこそノンテンポのバラード演奏の3曲目「The Dreamer is the Dream」も生きてきて、最初の部分ではバスクラ、アドリブからはテナーを吹いているポッターのコルトレーン、あるいはブレッカー的な指使いを多用しながらのプレイに加えて、今度はマーティンが聴き応えのあるソロを取っているのだからなんともたまらない。また2曲目と4曲目「Memory and Desire」の出だしでは、シンセ代わりに民族打楽器やチェレスタ等を使っているのがいいアクセント。その2曲目と5曲目「Yasodhara」、6曲目「Sonic Anomaly」以外はバラード調の演奏となっているとはいえ、曲調はそれぞれ異なっているし、ポッターが吹いている楽器もテナーをメインとして曲ごとに変えたりしているので(4曲目には多重録音による木管アンサンブル部分もあり)、全体を通して一本調子に感じることなく楽しませてくれる。ドラマーとしては前2作に参加していたエリック・ハーランドとネイト・スミスも相当良かったけれど、ここでのギルモアもいかにも彼らしい先の読めないドラミングで魅了させてくれて、それがまた曲調にもよくマッチしているものだから、わたし的にはそれだけでも満足してしまう。全曲でアドリブを取っているわけではないけれど、ビレージェスのいかにもキューバ出身らしいリズムのしっかりしたプレイ(フリー的なものまでカバーしている)もキラリと光っているね。
さすがにポッターだけあって、本作もまた終始いい感じで楽しめるのだが、これが他レーベルへのレコーディングであればもっとハードな曲の割合を増やすはずなので、できることならそういうのを聴いてみたかった。また録音(エンジニアはジェームス・ファーバー)もECM的な加工臭がするのに加えてピアノ以外は若干奥に引っ込んでいて(全体的にクールな感じ)、私の好みとは相容れないものがある。


評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)

DREAMER IS THE DREAM
POTTER/VIRELLES/MART
ECM
2017-04-21