Kevin Eubanks / East West Time Line

Tracks 1-5
Kevin Eubanks (G)
Orrin Evans (P, Rhodes)
Dave Holland (B)
Nicholas Payton (Tp)
Jeff 'Tain' Watts (Ds)
Tracks 6-10
Kevin Eubanks (G)
Rene Camacho (B)
Mino Cinelu (Per)
Bill Pierce (Ts)
Marvin 'Smitty' Smith (Ds)
Rec. 2016?, NYC, CA
(Mack Avenue MAC1119)

昔だけではなく、近年のリーダー作「Kevin Eubanks / Zen Food(10年、別頁あり)」「Kevin Eubanks / The Messenger(12年、別頁あり)」や、「Dave Holland / Prism(13年、別頁あり)」「Orrin Evans / #knowingishalfthebattle(16年、別頁あり)」でのプレイも相変わらず素晴らしかったケヴィン・ユーバンクスだが、本作では東西対抗的なアルバム作りとなっているのが興味深い。私の好みとしてはメンバー的にNYレコーディングの方だけど、CAの方もドラマーが上記「Zen Food」や「The Messenger」から引き続きのマーヴィン・ スミッティ ・スミスだし、この2枚にはレネ・カマチョとビル・ピアースも参加しているので、どちらの演奏であってもいい感じで楽しめるのは間違いないだろう。

ユーバンクスのオリジナルが5曲(NYレコーディング)と、デューク・エリントンの「Take The Coltrane」、チック・コリアの「Captain Senor Mouse」、レイ・ブライアントの「Cubano Chant」、マーヴィン・ゲイの「What's Going On」、スタンダードの「My One and Only Love」(CAレコーディング)で全10曲。
NYレコーディングの方は、いかにもこのメンバーらしいキビキビとした演奏。1曲目「Time Line」における10/8拍子の変則的なテーマ部分を聴いただけでもワクワクしてしまうのだが、4ビートにチェンジ(コード進行も変えているよう)してからのユーバンクスのイケイケなアドリブがこれまたカッコいいし(ニコラス・ペイトンは思ったほどではないけれど)、後半には終始豪快に叩いているワッツのソロも用意されていて、もうこの1曲だけでも買ってよかったという気分にさせてくれる。またユーバンクスがアコギに持ち替えて弾いている2曲目「Watercolors」も、モーダルな雰囲気を醸し出しながらのゆったりとした3拍子(6/8拍子)の中、ユーバンクスは当然として、ペイトンも曲調にバッチリ嵌ったプレイで聴かせてくれる。そのペイトンは3曲目「Poet」の前半(ユーバンクスとのデュオ部分)でエレピ、デイヴ・ホランドとワッツが加わってからの後半ではアコピを弾いているけれど、こちらのプレイもピアノが本職でも食っていけるのではと思うほどに上手だね。同じくペイトンがアコピを弾いている4曲目「Carnival」では、ホランドの短いながらも骨太なソロが素敵。ファンク調の3拍子の5曲目「Something About Nothing」も比較的ラフな曲作りの中、各人が持ち味をきちんと発揮したプレイで楽しませてくれる。
CAレコーディングの方は、6曲目「Take The Coltrane」を2-3のルンバ・クラーベでやっているのが面白い。そのリズムが原曲のメロディーに何の違和感もなく嵌っているのだから、これはアイデアの勝利といっていいだろう。アドリブ一番手でテナーを吹いているピアースといい、その後のユーバンクスといい、流石のプレイで聴かせてくれるし、カホン等いろんなパーカッションを使いながらのミノ・シネルのソロも個性的で、スミスだけはバッキングに徹してるものの、こちらのユニットもNY組と比べて遜色ない演奏で楽しませてくれる。アドリブ部分であえてベースを休みにしているのも、プロのアレンジならではといった感じだね。続く7曲目「Captain Senor Mouse」ではスミスが大活躍。アコギを弾いているユーバンクスとのデュオ(シネルも味付け程度に加わっている)だけど、テーマを難しいキメの部分以外はバッサリとカットして、新たにユーバンス的なものを付け加えている斬新なアレンジと丁々発止な演奏が相まって、この曲が大好きな私をルンルン気分にさせてくれる。ピアースがソプラノを吹いているボサノヴァタッチの8曲目「Cubano Chant」も、スミスがリムショットではなく普通にスネアを叩くことによって、軽い中にも重量感があるのがいい塩梅だし、9曲目「What's Going On」を速めの4ビートでやっているのも、自分にはこのような発想がなかっただけにビックリ。短めの演奏でフェードアウトで終わっているのには不満が残るけど、ギター、テナー、ベースだけでやっているラストの「My One and Only Love」でのオーソドックスな演奏が心に染み渡って、そんなことはどうでもよくなった。
ということで演奏自体はどちらのユニットにも満足するのだが、録音(エンジニアはRobert M. Biles)はホランドのベースが曲により不鮮明なのが気になるところ。またワッツのドラムの音も緩めだし、全体的に昔のCTIのような加工臭も感じられるので、もっと素直な音で録って欲しかった。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!) 

East West Time Line
Kevin Eubanks
Mack Avenue
2017-04-07