Art Hirahara / Central Line

Art Hirahara (P)
Linda Oh (B)
Rudy Royston (Ds)
Donny McCaslin (Ts)
Rec. October 8, 2015, NY
(Posi-Tone Records PR8161)

アート・ヒラハラは何者って感じだけど、共演者が現デイヴ・ダグラス・クインテットのリズム隊でもあるリンダ・オー、ルディ・ロイストンに、テナーがクリス・ポッターに追いつけ追い越せで頑張っているドニー・マッキャスリンなのだから買わないわけにはいかないだろう。アキラ・タナのOtonowaバンドで昨年来日したときのサイトのプロフィールによると、これが初聴きのヒラハラはサンフランシスコ出身(1971年生まれ)の日系2.5世で、2003年からNYを拠点に活動中とのこと。これまでに3枚のリーダー作がリリースされている他にも多くのアルバムにサイド参加していることからして( 本人のサイト参照)、なかなかのやり手なのは間違いなさそうだ。

ヒラハラ曲が11曲、C. Buarqueの「As Minhas Meninas」、日本の「黒田節」「夕焼け小焼け」で全14曲。
マッキャスリンは数曲のみに参加で、ピアノトリオが主体(「黒田節」と「夕焼け小焼け」はソロピアノ)となっているけれど、まずは完全にアメリカナイズされているヒラハラのピアノが好感触。プレイ的にはケニー・バロンあたりに近いものがあるけれど、落ち着いた感じの曲調を基調としながらの剛柔のバランスが取れた曲作りの良さも相まって、どの曲(4ビートがメイン)もいい感じで楽しませてくれる。それには曲中でダイナミックに盛り上がっているロイストンのプレイも大いに関係しているね。でも同じくピアノトリオでやっている「 Luis Perdomo & Controlling Ear Unit / Twenty-Two(15年、別頁あり)」あたりのドラミングと比較するとスピード感に欠けるような気がしないでもない。その辺は楽曲との兼ね合いもあって、これ以上叩くとドラムだけが浮いてしまうので、ロイストンのよさを最大限に活かすためにガツンとくる曲も何曲か用意するなり、ソロの場面を増やすなりしていれば更によかったと思う。それはオーにも当てはまることで、バッキングだけでも彼女の上手さは伝わってくるものの、ソロを取っているのは11曲目「As Minhas Meninas」だけと極端に少ないので、トリオとしての演奏に変化を与えるためにも、できればベースソロの場面はもっと欲しかった。その点マッキャスリン参加の曲は、それ自体がいいアクセントとなっているし、期待どおりのプレイで聴かせてもくれる。
ヒラハラは音楽的にもテクニック的にもいいものを持っているけれど、これだけのメンバーが揃っていながらもピアノトリオとしてはもの足りない部分がある(カルテットの方はバッチリ)のは今後の課題だろう。それには短めの曲が多いのも関係しているね。全部の曲を聴いてもらいたい気持ちは分かるけど、ピアノだけではなくベースとドラムを十分に聴かせるためにもにも1曲の演奏時間を長くして、その分曲数を減らす方向で行った方がトリオとしての魅力が増すのではと思う。本作の録音(エンジニアはNick O'Toole)はいかにもPosi-Toneらしく、各楽器がごく自然な音で録れているし、それがやっている音楽にもよくマッチしていて上々だ。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)

Art Hirahara
Posi-tone Records
2016-12-30