Wallace Roney / A Place in Time

Wallace Roney (Tp)
Gary Bartz (As)3,5,6,7
Ben Solomon (Ts, Ss)except 8
Patrice Rushen(P)except 4,8
Buster Williams (B)
Lenny White (Ds)
Rec. June 10-11, 2016, NJ
(Highnote Records HCD7295)

ウォレス・ルーニーのリーダー作を買うのは、ブログにアップしているアルバムとしては「Wallace Roney/If Only For One Night(10年、別頁あり)」「Wallace Roney / Home(12年、別頁あり)」以来だけど、本作ではメンバーを一新しているのが興味深い。ゲイリー・バーツ、パトリース・ラッシェン、バスター・ウィリアムス、レニー・ホワイトのそうそうたる面々に、「Beka Gochiashvili / Beka Gochiashvili(13年、別頁あり)」にルーニー、ホワイトと一緒に1曲だけ参加していたベン・ソロモン(ルーニーの秘蔵っ子?)も加わって、はたしてどういうことになっているのか楽しみだ。

ルーニーとソロモンの共作が1曲、ソロモン、ラッシェン、ウィリアムス、ホワイト曲が各1曲、トニー・ウィリアムスの「Elegy」、ドビュッシーの「Clair de Lune」、クルト・ワイル/ガーシュウィンの「My Ship」で全8曲。
60年代のマイルスの黄金クインテットを意識した演奏となっているのはこれまでとも変わらないと思うけど、ピアノがハンコック的なラッシェン、ベースがカーター的なバスターだし、ホワイトの4ビート・ドラミングのルーツもトニーなので(ライドシンバルの音もよく似ている)、ますますそれ風の演奏となっているのがいい塩梅。特にラッシェンは純粋な4ビートジャズをやっているのをあまり聴いたことがないので、もうそれだけで嬉しくなってしまう。アドリブの場面はそんなに多くはないけれど、1曲目「Around and Through」でのもろハンコック調のピアノなんかは絶品だね。もちろんルーニーもマイルス節丸出しで吹いているし、バーツやソロモンもショーターとはちょっと違うけどそれなりの雰囲気を醸し出しているし、楽曲自体も8ビート調の曲を含めてもろマイルス・クインテット的な曲調となっているので、こういう真似事的な演奏が嫌いな人はさておき、60年代のマイルス好きにとってはたまらないだろう。そんな中でマイルスというよりはカーターの曲調に近いバスター曲の3曲目「Air Dancing」や、6曲目のホワイトの「L's Bop」(コリアの「The Griffith Park Collection」でもやっている名曲)がいいアクセントとなっているし、ラストの2曲に趣向を変えて「Clair de Lune(月の光)」と「My Ship」を持ってきているのも心憎いものがある。
コンテンポラリーなジャズにどっぷりハマっている私ではあるけれど、若いときに狂ったように聴いていたのが60年代のマイルス・クインテットやコルトレーン・カルテットなので(それと並行してマハビシュヌ・オーケストラのようなジャズ・ロック等も大好きだったけど)、当然ながらルンルン気分で楽しむことができた。これでホワイトのドラムソロも用意されていれば更によかったと思う。録音(エンジニアはSean Kelly)もトラックによっては音像的なバランスが変わっているものの、やっている音楽にはよくマッチした音で録れていて上々。手元には新譜が他にも3枚あるけれど、本作を今年の聴き初めにして大正解だった。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!) 

A PLACE IN TIME
WALLACE RONEY
HIGNO
2016-11-18