Jacam Manricks / Chamber Jazz

Jacam Manricks (As, Ss, Ts, Fl, Alto-Fl, Cl)
Kevin Heys (P, Rhodes)
Gianluca Renzi (B)
Ari Hoenig (Ds)
Rec. November 3, 2015, NY
(MMR 8829548174)

ケヴィン・ヘイズ、アリ・ホーニグ買い。リーダーのジェイカム・マンリックス(?、オーストラリア出身)を聴くのはこれが初めてと思っていたけれど、自ブログで検索したらPosi-Toneからリリースの「Jacam Manricks/Trigonometry(10年、別頁あり)」も所有しているのが見つかった。そちらにはオベド・カルヴェールが参加ということで、マンリックスはやり手のドラマーを好んで起用しているのは嬉しいのだが、アルバムタイトルとなっているChamber JazzだとMJQのような大人しい演奏を想像してしまうので、その辺がどうなのかは気になるところ。でもこのメンバーのことなので、単に室内楽的なジャズには終わっていないものと期待している。

マンリックス曲が8曲と、マイルスの「Deception」、シベリウスの「En Etsi Valtaa Loistoa (Julvisa)」で全10曲。
いったいどこがチェンバー・ジャズなのか分からないほどの、現代感覚に満ち溢れた変拍子もありのコンテンポラリー・ジャズをやっているのにまずはホッとする。楽曲は非4ビートと4ビートが7:3ぐらいの割合だけど、マンリックスやヘイズのアプローチに対するホーニグの反応が目茶苦茶カッコいいし、スリリングなドラムソロもふんだんに用意されていて、もうそれだけでも買ってよかったという気分になってしまう。ここでのホーニグはリーダーアルバムの最新作「Ari Hoenig / The Pauper & the Magician(16年、別頁あり)」以上に魅力的なドラミングをしているね。それだけマンリックスや楽曲との相性がいいということだと思うけど、それはヘイズも同様で、曲によってはエレピも用いながら曲調にバッチリ嵌ったプレイをしているのだから、さすがにこの2人だけのことはある。また肝心のマンリックスもアルト、ソプラノをメインとしながら(3曲目「Ecmish」のようにテナーやフルート等を多重録音している曲もあり)、デヴィッド・ビニーあたりと比較すると癖がなく幾分クールながらも温度感の高いプレイで聴かせてくれるし(4曲目「Wandina」におけるテーマのアルペジオ的な循環呼吸も見事)、8曲目「Forbidden Fruit」以外はバッキングに徹しているだけではあるも、ジャンルカ・レンジの土台をガッチリと支えているベースにも好感が持てる。4人が調和を取りながらも、それぞれの持ち味も存分に発揮されている(ヘイズは半分ぐらいの曲で休んでいるけれど)、カルテットやサックストリオとしての理想的な演奏には文句のつけようがない。
楽曲の良さも相まって、どの曲も最高にいい感じで楽しむことができるし、録音(エンジニアはMichael Brorby)も各楽器の骨格がガッチリとしていながらも温かみのある音で録れていて、本作は当然ながらの5つ星。今年のベストアルバムの発表前に入荷していれば2位か3位にしていたと思う。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!) 

Chamber Jazz
Jacam Manricks
CD Baby
2016-10-03