Dejan Terzic / Prometheus

Dejan Terzic (Ds)
Chris Speed (Sax)
Bojan Zulfikarpasic (P)
Matt Penman (B)
Rec. February 11-12, 2016, NY
(Cam Jazz CAMJ7908)

アントニオ・ファラオの諸作品で名前を知ったデジャン・テルジック(Drummers項あり)のリーダー作を買うのは、「Dejan Terzic Quartet / Four for One(99年)」「Dejan Terzic / Coming Up(02年)」以来。その間にも「Antonio Farao/Encore(05年)」「Jens Winther European Quintet/Concord(05年)」「Anke Helfrich Trio/Better Times Ahead(06年)」「Lakatos, Enders/The Tough Tenors(06年)」「Jermaine Landsberger, Paulo Morello/Hammond Eggs(07年)」「Anke Helfrich/Stormproof(09年)」(各別頁あり)で聴いているのだが、それ以降は音沙汰がなかったのでどうしているのかなと思っていたら、本人のサイトを見てみたらUngergroundやMelanoiaというバンド名義(テルジックがリーダー)で5枚のアルバムがリリースされているんだね。なので単に私が見逃していただけだった。本作のメンバーのクリス・スピードは、その中のUngergroundにも参加。ボヤン・ズルフィカルパシチ(セルビア系フランス人)は、Bojan Zという名前で「Michel Portal / Bailador(10年、別頁あり)」「Romano Sclavis Texier / 3 + 3(12年、別頁あり)」に参加しているのが見つかった。マット・ペンマンはコンテンポラリー・ジャズ系の多くのアルバムに参加しているので説明不要だろう。ジャケットに書かれているAxiomがバンド名のようだけど、はたしてこのメンバーでどういうことになっているのか楽しみだ。

全10曲がテルジックのオリジナル。
昔のテルジックはビル・スチュワートに近い感じだったのだが、ここでの演奏は非4ビートが主体なこともあって、また一味違った印象を受ける。どちらかというと手数が少なめのアントニオ・サンチェスといった感じかな。エフェクト系のシンバルも用いたりしながらのカラフルなドラミングが魅力的。伴奏がありのドラムソロも含めて、俺が俺がと前面には出てこないので派手さは感じられないけれど、高度なテクニックに裏打ちされた、なおかつ現代的なセンスに満ち溢れているドラミングを聴いているだけでも嬉しくなってしまう。また共演者の3人も、曲によってはけっこう細かい部分まで譜面に書き込まれているように感じられるというのに、テルジックがやりたいことをよく理解しながら、きっちりと調和の取れた演奏をしているのだから、流石にメンバーに抜擢されただけのことはある。大きくスポットが当たっているスピードのテナーは幾分スケール練習的ではあるけれど、それなりの個性が感じられるし、ズルフィカルパシチの骨太なピアノも素敵で、曲によってのシンセ(かな?)もサウンド上のいいアクセント。またペンマンのベースも、いつものことながら状況を瞬時に読み取りながらの対応力が素晴らしい。似たような感じのダークな曲調が続いているわりには最後まで退屈させないのは、それぞれの曲のリズム(ビート)が異なるから。この辺はテルジックがリーダで、しかも全曲書いているので当然ではあるのだが、欲をいえば互いにせめぎ合うようなハードな曲も入っていれば更によかったと思う。
久しぶりに聴いたテルジックだけど、やっぱりいいドラマーだね。バンドとしてもオリジナリティーがあるし、録音(エンジニアはMax Ross)もバスドラはちょっと弱いものの、その他の楽器はバランスよく録れていて(その音質も上々)、本作は大いに気に入った。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!) 

PROMETHEUS
DEJAN & AXIO TERZIC
CAMJA
2016-11-11