Matt Brewer / Unspoken

Matt Brewer (B)
Ben Wendel (Ts)
Charles Altura (G)
Aaron Parks (P)
Tyshawn Sorey (Ds)
Rec. February 19, 2016, NY
(Criss Cross 1390)

マット・ブルーワーの初リーダー作の前作「Matt Brewer / Mythology(14年、別頁あり)」は期待したほどではなかったけれど、本作ではメンバーをガラリと代えて、「Mike Moreno / First in Mind(11年)」「Mike Moreno / Another Way(12年)」「Will Vinson Quintet / Live at Smalls(13年)」(各別頁あり)でも一緒のアーロン・パークス以外は、これまで共演したことがないような人たちとレコーディングしているのが興味深い。パークス、ベン・ウェンデル、チャールズ・アルトゥラ、タイショーン・ソーリー(?)の4人も、普段はあまり接点がなさそうな感じだけど(「Tigran Hamasyan/Red Hail(09年、別頁あり)」ではウェンデルとアルトゥラが共演しているが)、はたしてこのメンバーでどういうことになっているのか楽しみだね。ちなみにアルトゥラは、先日聴いたばかりの「Tom Harrell / Something Gold, Something Blue(16年、別頁あり)」でもいい仕事をしていた。

ブルーワー曲が7曲、ビル・フリゼールの「Twenty Years」、パーカーの「Cheryl」で全9曲。
非4ビートが主体。全体的にダークな曲調となっているのは前作とも変わらないけれど、ゆったり目の演奏が続いているのは私が望んでいるのと異なる部分。まあ曲中で盛り上がってはいるし、場面によってはかなりアグレッシブでもあるのだが、どうせこのメンバーでやるのだったら、速いテンポの曲なんかも用意するなりして、もっといい意味でバラエティーに富んだ演奏をして欲しかった。その方が各人の持ち味が存分に発揮できると思うけどね。ブルーワーがこんな感じの曲調が好きなのは分かるけど、テーマを受け持っているウェンデルが白玉(2分音符や全音符)が多いために変に間延びして聴こえるし、アルトゥラもマイク・モレノあたりを意識しているのか、「Chick Corea / The Vigil(13年、別頁あり)」のときのような思い切りのよさは感じられないし(このような弾き方もできる引き出しの多さには逆に感心するが)、パークスもアドリブの見せ場が少ないせいでなんとなく影が薄いように感じてしまう。また肝心のブルーワーも曲によってはエレベに持ち替えたりもしているけれど、ほとんどの曲でバッキングに徹しているだけなので、もっと俺が俺がと前面に出てきてもいいのになと思ってしまう。ソーリーだけはフロントを鼓舞しようとパワフルに攻めまくっているので、ワタシ的にはそれだけでも楽しめてしまうとしても、バンドとしての魅力はあまり感じられないし、楽曲的にも唯一アップテンポでやっていて、なおかつ曲調も異なる6曲目「Cheryl」のブルース曲が一番しっくりくるという結果に終わってしまった。
ということで本作もまた期待していたほどの演奏ではなかったけど、曲調の範囲内ではそれなりにいい感じで楽しめるので、これでよしとしよう。録音(エンジニアはジョー・マルシアーノ)もCriss Crossらしい無難な音ではあるけれど、各楽器の音質、バランス共に良好だ。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!) 

UNSPOKEN
MATT BREWER
CRISS
2016-10-14