Danielsson Neset Lund / Sun Blowing

Marius Neset (Ts)
Lars Danielsson (B)
Morten Lund (Ds)
Rec. April 3, 2014, Copenhagen, Denmark
(ACT Music ACT 9821)

3人の共同名義となっているけれど、名前の並びからも年齢的にも、本作の実質的なリーダーはベースのラーシュ・ダニエルソンなのだろう。そのダニエルソンとドラムスのモーティン・ルンドがプロデュースも担当。もう一人のメンバーであるテナー奏者マリウス・ネセット(1985年、ノルウェーのベルゲン生まれ)は名前を憶えていないけど、自ブログで検索したら3人は「Adam Baldych & The Baltic Gang / Imaginary Room(13年、別頁あり)」でも共演しているということは、もしかするとそれが本レコーディングへの繋がりだったのかもしれない。サックストリオはけっこう好きな編成だし、大好きなルンドを聴くのも「Stefano Bollani / Joy In Spite Of Everything(14年、別頁あり)」以来久しぶりなので、はたしてどういうことになっているのかワクワクする。

ダニエルソン曲が4曲、ルンド曲が2曲、ネセット曲が1曲、ドン・グロルニックの「The Cost Of Living」で全8曲。
中には2曲目「Sun Blowing」のようにECM的で静的なルバート演奏もあるけれど、基本的にはリズム重視となっているのがまず嬉しい。ダニエルソンとルンドの躍動感のあるビートに乗っかりながら、ネセットがコルトレーンやマイケル・ブレッカー的な高度なテクニックを駆使しながらも表現力豊かに吹いていて、どの曲もいい感じで楽しませてくれる。3人が対等の立場でのサックストリオなので、ダニエルソンとルンドのソロの見せ場はもっとあってもいいような気がするけれど、2人ともバッキング自体が生き生きしているので、そんなこともどうでもよくなってくるね。コード楽器レスながらもコード進行がハッキリした曲作りとなっているので、難解に感じるようなことは全くないし、オリジナルがメインの中、唯一の既成曲として「The Cost Of Living」をやっているのも、グロルニックが大好きな身としては感動もの。演奏は非4ビートで統一しているけれど、例えば1曲目「Little Jump」はセカンドライン、ルンドが途中まで手叩きしている3曲目「Up North」は中東風だったりと、曲ごとに変化に富んでいるし、クレジットには記されていないけど、曲によってはベースにシンセ的なエフェクトを聴こえるか聴こえない程度にかけてみたり、6曲目「Evening Song For B」ではネセットがソプラノにテナーをオーバーダブしていたりと、演奏だけではなくサウンド面においても工夫が施させているおかげで、トータル44分があっという間に感じられる(実際もLP並の短さだけど)ほど極上の演奏が堪能できる。
近年のサックストリオとしては大のお気に入りのJDアレンの「JD Allen / Americana: Musings on Jazz and Blues(16年、別頁あり)」等の諸作品とはまた一味違った、北欧の匂いが感じられる演奏が実にいいし、流石にACTだけあって、録音(エンジニアはBoe Larsen)も今年の最優秀録音にしてしまいたいぐらいに各楽器が音楽的にもオーディオ的にも良い音で録れていて(バランスや音場感も完璧)、本作は文句なしの5つ星。エンドーサーになったのかどうかは分からないけど、ルンドが使っているTAMAのドラムも最高に良い音で鳴っている。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!) 

Sun Blowing
Danielsson/neset/lun
Act
2016-04-29