John Scofield / Country for Old Men

John Scofield (G, Ukulele on 12)
Larry Goldings (P on 1,5,6, Hammond Or on 2-4, 7-11)
Steve Swallow (B)
Bill Stewart (Ds)
Rec. April 3 and 4, 2016, CT
(Impulse 0602557088106)

ここ10年ぐらいのジョン・スコフィールドの純ジャズ作品の中では、「John Scofield Trio/EnRoute(04年、別頁あり)」「John Scofield/This Meets That(07年、別頁あり)」が大好きなのだが、そのメンバーであるスティーヴ・スワロー、ビル・スチュワートに加えて、本作では同じくジョンスコとは長い付き合いで、特に90年代はビルスチュと共にバンドの要となっていたラリー・ゴールディングスも、たぶん「John Scofield/That's What I Say(05年、別頁あり)」以来だと思うけど久しぶりに参加しているのだから、はたしてどういうことになっているのか楽しみ。今回はカントリーが題材となっているようだけど、このメンバーのことなので、単に耳当たりがよいだけの演奏には終わっていないものと期待している。

ジョージ・ジョーンズの「Mr Fool」、ハンク・ウィリアムズの「I'm So Lonesome I Could Cry」、ジェームス・テイラーの「Bartender's Blues」、ジョセフ・フィルブリック・ウェブスタの「Wildwood Flower」、トラディショナルの「Wayfaring Stranger」、マール・ハガードの「Mama Tried」、ドリー・パートンの「Jolene」、ボブ・ウィルスの「Faded Love」、ジャック・クレメントの「Just A Girl I Used To Know」、トラディショナルの「Red River Valley」、シャナイア・トゥエインの「You're Still The One」、ジョニー・マーサーの「I'm An Old Cowhand」で全12曲。
1曲目「Mr Fool」はそれなりのジャズアレンジは施されていても、肌触りはカントリーと変わらない穏やかな演奏となっているので、こんな感じで全曲やられてはたまったものではないと思ってしまうのだが、2曲目「I'm So Lonesome I Could Cry」では「EnRoute」を彷彿とさせるアップテンポの4ビートをやっているので、まずは一安心。やはりこのメンバーでは、こういう演奏をしてもらわないと面白くないんだよね。それがまた近年にしては珍しいほどにジョンスコとビルスチュがアグレッシブに攻めまくっている(ゴールディングスもスティーヴ・ガッド・バンドでのうっぷんを晴らすかのようにアドリブが過激)のだから嬉しくなってしまう。3曲目「Bartender's Blues」はまたもろカントリーといった感じのゆったりとした曲調であるけれど、4曲目「Wildwood Flower」はアップテンポと、遅い曲と速い曲が交互に収録されているようなアルバム作りとなっているし、遅い曲であっても5曲目「Wayfaring Stranger」のセカンドラインのように、リズムを変える工夫が施されていたりするおかげで、どの曲もいい感じの4ビート演奏で楽しませてくれる。もちろんギタープレイにも年齢的な衰えは全く感じられないし、ワンマンな演奏がメインながらも、他の3人の聴きどころも適所に用意されていて、各人の持ち味もそれなりに堪能できるのが、ジャズとしては当たり前のことではあるけれど、聴いていての飽きのこなさに繋がっているね。カントリーが題材なのでメジャー調の曲が多いけど、曲ごとに緩急をつけているので、またこんな感じの演奏かと思うようなことも全くない。でもこれでオリジナルをメインにスタンダードも何曲かといった選曲になっていれば、もっとよかったと思うけどね。ジョンスコ自身がプロデュースを担当しているので、その辺はImpulse側の要望ではなく、おそらく本人がカントリー曲をやってみたかったのだと思うけど、このような選曲であってもバンドとしての魅力はきちんと発揮されているわけなので、これでよしとしよう。
「EnRoute」のメンバーにゴールディングスも加わっての演奏は、過去にもあったかどうか記憶が定かではないけれど、自分的にはそんなに好んでは聴かないカントリー曲を題材に、これだけ良い演奏で楽しませてくれるのだから、前作「John Scofield / Past Present(15年、別頁あり)」ほどではないような気もするけれど、本作はオマケして5つ星にしておこう。録音も(エンジニアはJay Newland)も各楽器が非常にバランスよく録れていて、その音質共々上々だ。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!) 

COUNTRY FOR OLD MEN
JOHN SCOFIELD
IMPUL
2016-09-23