Branford Marsalis Quartet / Upward Spiral

Branford Marsalis (Ts, Ss)
Joey Calderazzo (P)
Eric Revis (B)
Justin Faulkner (Ds)
Kurt Elling (Vo)
Rec. December 16-19, 2015, at the Elis Marsalis Center for Music in New Orleans, LA
(Marsalis Music 8985306882)

ドラムスがジェフ・ワッツからジャスティン・フォークナーに代わっての、ブランフォード・マルサリス・カルテットの「Branford Marsalis Quartet / Four MFs Playin' Tunes(12年、別頁あり)」に次ぐ2枚目だけど、本作ではカート・エリングと共演しているのが興味深い。ヴォーカルものを好んでは聴かない私ではあるけれど、エリングに関してはその声質も音楽性も大好き。当然ながらリーダー作も「Kurt Elling/Nightmoves(07年、別頁あり)」「Kurt Elling / The Gate(11年、別頁あり)」等けっこうな枚数を所有しているし、ボブ・ミンツァー・ビッグバンドにゲスト参加している「Live at MCG(04年)」や「Old School:New Lessons(06年、別頁あり)」「Swing Out(08年、別頁あり)」なんかも聴いているのだが、まさかブランフォードのカルテットとやるとは思ってもみなかった。でもブランフォードはもろコルトレーン派なわけだし、エリングも上記「Old School:New Lessons」では「My One And Only Love」や「至上の愛パート3(Resolution)」を歌っていたり、そのものズバリのリーダー作「Kurt Elling/Dedicated To You: Sings Music Coltrane & Hartman(10年、当方未所有)」までリリースされていることを考えると、二人の共演は必然だったのかもしれない。

ガーシュウィンの「There's a Boat Dat's Leavin' Soon for New York」、Lester Lee, Sidney Keith Russellの「Blue Gardenia」、Chris Whitleyの「From One Island to Another」、スティングの「Practical Arrangement」、ロリンズの「Doxy」、フランク・シナトラ, Jack Wolf, Joel S. Herronの「I'm a Fool to Want You」、フレッド・ハーシュの「West Virginia Rose」、ジョビンの「So Tinha De Ser Com Voce」、ブランフォード(作詞Calvin Forbes)の「Momma Said」、ブランフォード(作詞エリング)の「Cassandra Song」、Lee Morris, Bernie Wayneの「Blue Velvet」、ジョーイ・カルデラッツォ(作詞エリング)の「The Return (Upward Spiral)」で全12曲。
選曲からも分かるとおり、あえてコルトレーン的なものを避けているのがむしろ潔い。おそらくエリングが歌いたかった曲も何曲か入っていると思うけど、それがこれまでのブランフォードのカルテットとは一味違う新鮮味に繋がっているね。大好きな「Doxy」をやっているのも嬉しい限りなのだが(エリングのスキャットがまた実にいい塩梅)、全体的にはバラード風の曲が多いので、ノリのいい曲がもう何曲かあってもよかったのではと思う。でも演奏に関しては言うことなしで、エリングのヴォーカルに対するブランフォードのオブリガードがなんとも心地いいし、歌ものに合わせたバンドとしての腹八分目の演奏がいい意味でのリラックス感を醸し出しているおかげで、ゆったりとした気分で楽しむことができる。そんな中ブランフォード曲の9曲目「Momma Said」では、しゃべり的なものに合わせながらのノンテンポ演奏となっているのがユニーク。またエリングがチェット・ベイカーばりにソフトタッチに歌っている2曲目「Blue Gardenia」や11曲目「Blue Velvet」、逆にロック調の16ビートで大きく盛り上がっている3曲目「From One Island to Another」がいいアクセントとなっている。カルデラッツォ曲の12曲目「The Return (Upward Spiral)」なんかは、70年代のキース・ジャレットを彷彿とさせるような曲作りとなっていて、「Keith Jarrett / My Song(78年)」が大好きな身としては、もうこの1曲だけでも買ってよかったという気分になってしまった。
これまでのブランフォード・カルテットからすると異質な作品ではあるものの、ヴォーカルがエリングなので、最後までいい感じで楽しむことができた。録音(エンジニアはRob "Wacko!" Hunter)はドラムスがホール臭い音で録れているのはあまり好きではないけれど、ヴォーカルとサックスに関しては非常に温かみがあって、なおかつリアルな音像がスピーカーの前に浮かび上がってくるのが素敵だね。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!) 

Upward Spiral
Branford -Quart Marsalis
Masterworks
2016-06-10