Herlin Riley / New Direction

Herlin Riley (Ds, Vo)
Emmet Cohen (P)except 6
Russell Hall (B)
Bruce Harris (Tp)
Godwin Louis (As, Ss)
Pedrito Martinez (Conga)2,3,6
Mark Whitfield (G)1
Rec. 2015?, NY

ハーリン・ライリーのリーダー作は「Herlin Riley/Cream Of The Crescent(05年、別頁あり)」以来ということになるのかな。その間も「Junko Onishi/Musical Moments(09年、1曲のみの参加)」「The Marsalis Family / Music Redeems(10年、ジェイソン・マルサリスと叩き分け)」「Cassandra Wilson / Silver Pony(10年)」「Ahmad Jamal / Saturday Morning(13年)」(各別頁あり)ぐらいでしか聴いたことがなかったので久しぶりの感があるだが、本作では「Emmet Cohen / In The Element(12年、別頁あり)」がなかなかよかったエメット・コーエンと共演しているのが興味深いところ。他のメンバーもゲスト参加のマーク・ホイットフィールド、ペドリート・マルティネス以外はコーエンと同じく20代の若手のような感じだけど(ゴッドウィン・ルイスは「Jason Palmer / Places(14年、別頁あり)」に参加しているのが見つかった)、はたしてこのメンバーでどういうことになっているのか楽しみだ。

ライリー曲が7曲、コーエン曲が2曲、トラディショナルの「Tootie Ma」で全10曲。
4ビートではなく、8ビート系やラテンのビートがメインとなっているのが意表を突く。そんな中ライリーが比較的シンプルに叩いているのは、きっと自分よりも将来有望な若者たちのプレイの方を聴いてもらいたいためなのだろう。その姿勢は立派ではあるけれど、ドラミング的には少々物足りなく感じてしまう。でも元来が俺が俺がと自己主張するようなドラマーではないとはいえ、中盤あたりからはけっこう手数も多くなってくるので、これでよしとしよう。特に自作の4曲目「The Big Banana」(10/8+9/8拍子)や8曲目「Hiccup Smooth」(11/8拍子、途中からは4ビートにチェンジ)では、ライリーとしては珍しく変拍子ドラミング(ソロもあり)が堪能できる。他のメンバーでは、やはりコーエンの上手さがきらりと光っているね。どんな曲調であっても先達のいいとこ取りしながら、いい意味でそつのないプレイをしていて(曲によってのレイドバックも素敵)、それがバンドとしての魅力にも繋がっている。またフロントのブルース・ハリスとゴッドウィン・ルイスもなかなかのやり手だし、ラッセル・ホールもバッキングだけでも十分に聴かせるだけの実力を持っているし(ソロも力強くていい感じ)、3曲に参加のマルティネスもライリーとバトルをしたりしながらダイナミックなプレイで花を添えているし、1曲目「New Direction」に参加しているホイットフィールドのギターもとてもいいアクセントとなっていて、各人とも持ち味をきっちりと発揮しているおかげで、どの曲をとってもノリノリで楽しませてくれる。後半の方では4ビート曲が増えているのも嬉しいし、ライリーが歌も歌っているセカンドライン的なラスト曲「Tootie Ma」も、ニューオーリンズ臭がプンプンして実にいいね。
ほとんど無名のミュージシャンを起用していながらも、豪華なメンバーでやっている「Herlin Riley/Cream Of The Crescent」と比較しても決して引けは取らないのだから大したもの。録音(エンジニアはプロデュースも担当しているJeffery Jones)はタイコ類の倍音が少ないのがジャズ的ではないし、トランペットとアルトも僅かながら細目ではあるけれど、これはこれで悪くない。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!) 

New Direction
Herlin Riley
Macav
2016-02-26