Danny Grissett / The In-Between

Danny Grissett(P)
Walter Smith III(Ts)
Vicente Archer(B)
Bill Stewart(Ds)
Rec. April 29, 2015, NY
(Criss Cross 1382)

ダニー・グリセットとビル・スチュワートは過去にも「Jim Rotondi / 1000 Rainbows(10年、別頁あり)」で共演しているのだが、リーダー作としてはこれが初めてなので、もうそれだけでもワクワクするね。これまでの全てのアルバム(「Danny Grissett/Promise(06年)」「Danny Grissett/Encounters(08年)」「Danny Grissett/Form(09年)」「Danny Grissett / Stride(11年)」各別頁あり)に参加しているヴィセンテ・アーチャーは、「Nicholas Payton / Letters(15年、別頁あり)」でもビルスチュと共演しているけれど、そこにこれが初共演と思われるウォルター・スミスIIIも加わって、はたしてどういうことになっているのか楽しみだ。

グリセット曲が5曲、ジョー・ヘンダーソンの「The Kicker」、ヘンリー・マンシーニの「Dreamsville」、ベニー・ゴルソンの「Stablemates」、アーヴィング・バーリンの「How Deep is the Ocean」、Patrizia Ferraraの「Sweetest Disposition」で全10曲。
4ビートが中心。ワンホーン・カルテットなので、特にアルバムの前半はグリセットよりもスミスIIIの方が目立っている感があり、どの曲でも自分のリーダー作やこれまでのサイド参加作品とはまたひと味違ったプレイで聴かせてくれるのだが、もちろんグリセットもアドリブになるとケニー・カークランドあたりとも共通するカッコいいプレイが魅力的だし、バッキングもツボを心得ていて、さすがだなあと思わせてくれる。また土台をガッチリと支えているアーチャーのベースにも好感が持てるし、例によってアタックを効かせながらのビルスチュのドラミングもバンドとしての躍動感に繋がっているね。どのような曲調であっても各人の持ち味が存分に発揮されているけれど、1曲目「Blue J」、2曲目「Seven Tune」、6曲目「Mr. Wiggle Worm」のような変拍子の曲であっても何事もないかのように演奏しているのが素晴らしいし、オリジナルの楽曲と既成曲との曲調差が感じられないおかげで、アルバムとしての統一感がきちんと取れているのも実にいい塩梅。モーダルな雰囲気の曲調が多い中、ピアノトリオだけでの7曲目「Dreamsville」(バラード曲)は明るめな曲調となっているけれど、それもまた演奏上のいいアクセントとなっているし、続く8曲目「Stablemates」は意表を突いてピアノとドラムスだけのデュオ対決となっていのだから興奮してしまう。この曲と9曲目「How Deep is the Ocean」は、確かチック・コリアもアコースティック・バンドか何かでやっていたと思うけど、グリセットのフレージングにもコリア節が如実に現れているということは、基本的にはカークランド(=ハンコック)・タイプではあるけれど、やはりコリアのことも相当研究しているのだろう。
これまでのケンドリック・スコットやマーカス・ギルモア入のグリセットのリーダー作も相当良かったけれど、ビルスチュ参加の本作もまた格別で、楽曲の良さも相まって、最後までノリノリで楽しむことができた。録音(エンジニアはマイケル・マルシアーノ)も各楽器がバランスよく録れていて上々だね。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!) 

The In-Between
Danny Grissett
Criss Cross
2015-09-18