Kenny Werner / The Melody

Kenny Werner(P)
Johannes Weidenmueller(B)
Ari Hoenig(Ds)
Rec. September 29-30, 2014, NYC
(Pirouet PIT3083)

ケニー・ワーナーのアルバムで最も好きなのが、ヨハネス・ワイデンミューラー、アリ・ホーニグとのトリオ作品。これまで「Kenny Werner/PeaceForm and Fantasy(01年)」「Kenny Werner/Beat Degeneration(02年)」「Kenny Werner Trio/Peace(05年、別頁あり)」「Kenny Werner Trio/With A Song In My Heart(08年、別頁あり)」を聴いてきたのだが、その中の最終盤「With A Song In My Heart」はVenus Records色が強すぎて面白くなかったので、7年ぶりのレコーディングとなる本作には大いに期待している。ちなみにホーニグとワイデンミューラーは、他にも「Jonathan Kreisberg / Trioing(02年)」「Ari Hoenig/Inversations(07年)」「Diego Barber / The Choice(11年)」(各別頁あり)で共演。ワーナーがPirouetで吹き込むのはこれが初めてのようだ。

ワーナー曲が4曲、Tom Jone/Harvey Schmidtの「Try to Remember」、コルトレーンの「26-2」、ブルーベックの「In Your Own Sweet Way」で全7曲。
アルバムタイトルが「The Melody」となっているのでメロディー重視の演奏かと思ったけど、確かに1曲目「Try to Remember」は綺麗なメロディーの楽曲の中、ソロピアノからのスタートなので、そういう傾向が見受けられるものの、リズム隊が加わってからはコード進行を変えてみたり、最後の方も「St. Thomas」に曲が切り替わるようなユニークな演奏となっているので、これまでと同様に先の読めない展開が楽しめる。1曲目から早くもグイグイと引き込まれてしまうのだが、オリジナルの2曲目「Who?」にしても、マイルスの「Bitches Brew」的な混沌とした8ビート演奏が、途中から霧が晴れたかのように明快なメロディーが出現してきて実にいいね。ビシッと決めている部分と遊びの部分のバランス配分も絶妙で、このトリオならではのインタープレイが堪能できる。「Kenny Werner / Balloons(11年、別頁あり)にも収録されている3曲目「Balloons」は、チック・コリアの「Children's Song #」シリーズ的なピアノソロからスタートする3/4拍子曲。この曲も綺麗な曲調ではあるけれど、単に綺麗なだけでは終わっていないのがいい塩梅。4曲目は「26-2」は、再構築されたテーマを3人が一糸乱れぬユニゾンをしているのがカッコいい。アドリブからは5/4拍子になっていたり、テンポも変化していたりして、トリオとしての真髄が堪能できる。ホーニグのロングドラムソロが用意されているのも嬉しい限りだね。
残りの曲は割愛するけれど、全体的にゆったりとしたテンポの曲が多いながらも、息をピッタリと合わせながらの曲中での変化に富んだ演奏には、これまでの同一メンバーによるトリオ作品と同様に(「With A Song In My Heart」は除く)、完全にやられてしまった。ただし録音に関しては、レーベルがPirouet(エンジニアはJason Seizer)ということで、異様に小さい音で録れているのが欠点。かといってダイナミックレンジが広いというわけでもなく、おそらくアンプのボリュームを上げた方がオーディオ的には音が良いということを考慮してのことだと思うけど、そんなのは余計なお世話なので(良い装置をきちんとチューニングしていれば、極小音量でも十分に良い音がする)、その分星一つ減点しておく。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!) 

The Melody
Kenny Werner
Pirouet Records
2015-07-10