Mark Guiliana Jazz Quartet / Family First

Mark Guiliana(Ds)
Chris Morrissey(Ac-B)
Shai Maestro(P)
Jason Rigby(Ts)
Rec. 2014?, NY
(Agate GAIP3559)

マーク・ジュリアナ(グイリアーナと読むのが正しいよう)参加のアルバムは、これまで「Avishai Cohen / At Home(04年)」「Avishai Cohen/As Is...Live At The Blue Note(07年、DVD作品)」「Avishai Cohen Trio/Gently Disturbed(08年)」「Donny McCaslin / Perpetual Motion(11年)」「Donny McCaslin / Casting for Gravity(12年)」「Gretchen Parlato / Live in NYC(13年)」「Brad Mehldau, Mark Guiliana / Mehliana: Taming The Dragon(14年)」「Donny McCaslin / Fast Future(15年)」(「At Home」を除き別頁あり)を聴いてきたのだが、昨年リリースされて話題となったリーダー作「Mark Guiliana / Beat Music: The Los Angels Improvisations(14年)」「Mark Guiliana / My Life Starts Now(14年)」は、ビートミュージック的なものがあまり好きではないのでパスしている。本人のサイトを見ると、リーダー作は他にも「HEERNT / Locked in a Basement(06年)」「Mark Guiliana / A Form of Truth(12年)」「Mark Guiliana / Beat Music(13年)」がリリースされていて、早くからそっち系の演奏を好んでやっているんだね。でも本作には上記「Avishai Cohen Trio/Gently Disturbed」で一緒だったシャイ・マエストロが参加しているし、バンド名もMark Guiliana Jazz Quartetと、これまでの路線とは違うような感じなのですぐに飛びついた。他のメンバーのクリス・モリッシー(本人のサイトあり)はこれが初聴き。ジェイソン・リグビーはリーダー作「Jason Rigby/Translucent Space(07年、別頁あり)」の他に、「Scott DuBois Quintet/Tempest(07年、別頁あり)」でも耳にしている。

ジュリアナ曲が8曲(うちラスト曲は国内盤のみのボーナストラック)と、R・マーリーの「Johnny Was」、Rufus Wainwrightの「Beautiful Child」で全10曲。他に「Johnny Was」とジュリアナ曲「Abed」の別テイクが収録されたCD-R(モノラル録音)もオマケで付いている。
バンド名のとおり、4ビートジャズをメインとしながらきっちりと勝負をかけている。ジュリアナのリーダー作にしてみると異質なのかもしれないが、私の好みとしてはやっぱりこっちの方。もちろんオーソドックスながらもコンテンポラリーな演奏なので、古臭く感じるようなことは全くない。YouTubeにはタムを省いて、代わりにエフェクト系のシンバルをセッティングしているジュリアナの動画が多く上がっているけれど、本レコーディングではごく一般的な3点セットで叩いているので、音的にも安心するね。共演者の中ではマエストロの、アヴィシャイ・コーエンのバンドや自分のリーダー作「Shai Maestro / Ziv Ravitz, Jorge Roeder(12年、別頁あり)」「Shai Maestro Trio / The Road To Ithaca(13年、別頁あり)」のときとは一味違った、場面によってはほのかなモーダル感も漂わせながらの繊細かつダイナミックなピアノが素敵。またこじんまりと纏まっている感はあるものの、オーネット・コールマン、ジョン・コルトレーン、ウェイン・ショーターあたりを連想させるリグビーのテナーも悪くない。モリッシーのガッチリと土台を支えている骨太なベースにも好感が持てるし、なんといっても普段のようなビート(リズム)は、1曲目「One Month」のイントロ以外は封印してジャズドラマーになりきって叩いていながらも、ドラミングの節々からはそれなりに個性が感じられるジュリアナのプレイが聴きものだね。ただし楽曲はダークな曲調がほとんどで、特に5曲目「Johnny Was」からはゆったりとした感じの演奏が続いていることもあって、聴いていると次第に気分が滅入ってくるので、曲ごとのメリハリはもっとつけてもよかったのではと思う。
ということで本作は全面的に共感できるといったわけではなく、これよりだったらむしろ昨年リリースの2枚の方が面白いかもと思ったりもするのだが、バンドとしての演奏には概ね満足するので、これでよしとしよう。録音(エンジニアはJohn Davis)もベース以外は若干丸っこい音で録れているけれど、やっている音楽にはよくマッチしている。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)