Matija Dedic Trio / MD in NYC

Matija Dedic(P, Key, Rhodes)
Vicente Archer(Ac-B)
Kendrick Scott(Ds)
Rec. November 22-23, 2009, NY
(Origin Records 82582)

Matija Dedic / Sentiana(14年、別頁あり)」を聴いて一発で気に入ったマティヤ・デェディッチ(?)だけど、他のアルバムも聴いてみたくなったので、2011年リリースの本作を買ってみた。こちらの方はアコピだけではなくエレピやシンセも使っているので、「Sentiana」とは一味違うことをやっていると思うけど、スコット・コリー、アントニオ・サンチェスの超強力リズム隊コンビとは系統が異なっているヴィセンテ・アーチャー、ケンドリック・スコットとで、はたしてどういうことになっているのか興味深い。

デェディッチ曲が6曲と、ハンコックの「Maiden Voyage」、マイルスの「Blue in Green」、スティングの「Fragile」、Tovy Gadの「If I Where a Boy」(Wereが正しいよう)で全10曲。
想像していたのとは違って、しっとりと落ち着いた楽曲「Her Name」でスタート。そのピアノの肌触りは「Sentiana」と同様に、やはりエンリコ・ピエラヌンツィに通じるものがある。2曲目「Slawenskaya」はアコピの他にシンセ音も味付け程度に加えながらの(たぶんオーバーダブ)、「カツカツ」ビートによるコンテンポラリーな演奏だけど、この曲ではデェディッチよりもスコットの方がよく目立っているね。容赦なくガツンといっていて、「そうそうこれこれ!」と思わせてくれる。3曲目「Update」はミディアムテンポの4ビート。1曲目と同様の落ち着いた演奏ではあるけれど、アグレッシブさを秘めながらのソフィスティケートなピアノがいい感じだし、アーチャーもソロで聴かせてくれる。4曲目は大好きな「Maiden Voyage」。シンセの持続音を効果的に用いながらのアコースティックな演奏となっているけれど、テーマの後にいきなりベースソロに突入するのは意表をついていいとしても、全体的に大人しめの演奏なので、もっと盛り上がる部分があってもいいのではと思う。といってもデェディッチのアドリブはけっこうダイナミックなので、これはスコットの「カツカツ」ビートを主体としたバッキングの方に問題があるのだろう。5曲目「Angst」は7/4拍子基調の16ビート曲。これまでの曲と同様アコピがメインではあるも、テーマ部分でのシンセが効果的だし、カッコいいキメも用意されていて実にいい感じ。アドリブに入ってからは6/8拍子にチェンジしてぐっとジャズ寄りになっているののもグッドだし、後半にはスコットのちょっとしたドラムソロも用意されているけれど、せっかくのいい演奏が約4分と短めなので(前曲の「Maiden Voyage」は10分もやっている)、できれば長い演奏でもっとワクワクさせてほしかった。6曲目は「Blue in Green」。お定まりのバラード演奏だけど、ストリングス的なシンセをオーバーダブしているせいで安っぽく感じてしまう。おそらくウィズ・ストリングス的なことをやってみたかったのだと思うけど、アコピだけのトリオで演奏は成立しているのだから、これは必要なかったね。7曲目「Cheekee Chicks」はボブ・ジェームス的。アコピの他にエレピも弾いていて、さらにシンセも鳴っているといったフュージョンチックな演奏だけど、これまでの曲調とは異なっているのに違和感を感じる。後半で弾いているシンセのアドリブも音色的に気に入らないのだが、デェディッチはそもそもシンセがあまり得意ではないのだろう。最初は気にならなかったけど、「Blue in Green」といいこの曲といい、その使い方が耳に付くようになった。その点8曲目「Fragile」はアコピしか使っていないのでホッとするけどね。トリオとしてもスティングが聴けば悔しがるのではと思うほどに良い演奏をしている。
残りの曲は省略するけれど、無理してシンセやエレピを使わずに、アコピだけで勝負をかけた方がよかったのではないかな。録音はドラムスが若干奥に引っ込んでいるものの、トリオとしてのバランスは悪くないし、各楽器の音質も上々だ。

評価☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!) 

M.D. in N.Y.C.
Matija Dedic
Origin Records
2011-01-18