Donny McCaslin / Fast Future

Donny McCaslin(Ts)
Jason Lindner(P, El-P, Syn)
Tim Lefebvre(El-B)
Mark Guiliana(Ds)
David Binney(Vo, Additional-Syn)
Nina Geiger(Vo)
Nate Wood(G)
Jana Dagdagan(Spoken Word)
Rec. June 2014, NY
(Greenleaf Music GRE-CD1041)

前作「Donny McCaslin / Casting for Gravity(12年、別頁あり)」と同一メンバー(ジェイソン・リンドナー、ティム・ルフェーヴル、マーク・ジュリアナ、デヴィッド・ビニーのみ)によるドニー・マッカスリン(マッキャズリン)の新譜だけど、その間にジュリアナ(グイリアーナと読むのが正しいよう)の人気は「Brad Mehldau, Mark Guiliana / Mehliana: Taming The Dragon(14年、別頁あり)」や、2枚のリーダー作「Mark Guiliana / Beat Music: The Los Angels Improvisations(14年)」「Mark Guiliana / My Life Starts Now(14年)」等でうなぎ登りになっているので、本作も聴くのが相当楽しみだ。他のメンバーの女性ヴォーカリスト、ニーナ・ジェイガー(?)は、「John Escreet / Sabotage and Celebration(13年、別頁あり)」「David Binney / Anacapa(14年、別頁あり)」にも参加。ネイト・ウッドは「Ben Wendel/Simple Song(09年)」「Tigran Hamasyan/Red Hail(09年)」「Tigran / Shadow Theater(13年)」(各別頁あり)のドラマーと同一人物かな?これが初聴きのJana Dagdaganは、All About Jazzによると1993年ハワイ生まれで、現在はNYを拠点に活動しているエレクトロニック・ミュージシャンのようだ。

マッカスリン曲が5曲、ビニーとの共作が2曲、ビニー曲が1曲、その他2曲で全10曲。
16ビートをメインとしたエレクトリック・サウンドだけど、バスドラとベースのラインをピタリと一致させながらのリズム重視の演奏が滅茶苦茶カッコいいね。多くの曲でシンセやコーラスが効果的に使われていて、特にアルバムの前半はアドリブで聴かせるというよりは、トータルサウンドの方に趣を置いた演奏となっているけれど、その曲調が雄大で何らかのストーリー性が感じられるのは、マッカスリンが参加していた「Antonio Sanchez / New Life(13年、別頁あり)」の3曲目「New Life」あたりを意識してのことなのかもしれない。聴きどころはなんといってもきちんと構築された楽曲の中、朗々と歌いあげているマッカスリンのテナーで、曲によってはクリス・ポッターのような破天荒さも加味しながらの、いい意味でワンマンなプレイが実に魅力的。またジュリアナの、テクノやビートミュージック的なものまで吸収しながらのコンテンポラリーなドラミングもよく目立っているね。他のメンバーはバッキングに徹してる感があるけれど、この2人のプレイを聴いているだけでも腹一杯になってしまうので、物足りないと感じることは全くない。ただし似通ったビートの曲が続いているので、曲調としてのメリハリはもっとつけてもよかったかも。やっていること自体はとてもカッコいいのだが、アルバムの後半は少々くどく感じてしまった。
「Donny McCaslin / Casting for Gravity」と同一メンバーなので、その分インパクトには欠けるものの、バンドとしての演奏には進化が感じられるし、録音(エンジニアはマイク・マルシアーノ、ミックスとマスターはネイト・ウッド)も各楽器の音質、全体のバランス共に上々で、オーディオ的にもルンルン気分で楽しめた。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)