Avishai Cohen Trio / From Darkness

Avishai Cohen(Ac-B, El-B)
Nitai Hershkovits(P)
Daniel Dor(Ds)
Rec. May and July 2014, Sweden
(RazDaz Records RD4616)

アヴィシャイ・コーエンは同じイスラエル人であるニタイ・ハーシュコヴィッツのことをだいぶ可愛がっているようで、共演アルバムは「Avishai Cohen with Nitai Hershkovits / Duende(12年、別頁あり)」「Avishai Cohen / Almah(14年、別頁あり)」に次いで、これで3枚目となるのだが、今回はドラマーがダニエル・ドール(?)という、聞いたことがない人に代わっているのが興味深いところ。ドールは本人のFacebookによると、テルアビブ(イスラエル)の出身で、2010年にNYのThe New School for Jazz and Contemporary Musicを卒業しているけれど、コーエンのトリオに抜擢されたということは、彼もまたハーシュコヴィッツと同様に、きっとかなりのやり手なのだろう。近年のコーエンはかつてのような過剰なまでの中東色が薄れて、ベーシストとしてはチック・コリアのオリジン時代から大好きだったのに加えて、音楽的にも好ましい方向に向かっているので(中には相変わらずのアルバムもあるが)、本作にも大いに期待している。

コーエン曲が10曲と、チャップリンの「Smile」で全11曲。
1曲目「Beyond」からドールの機敏なドラミング(奏法的にはLudwig AfonsoやHenry Coleあたりに通じるものがある)がよく目立つ曲作りとなっていて、実にいい塩梅。それはラテンタッチな曲調の2曲目「Abie」も同様で、私としてはもうそれだけでも嬉しくなってしまうのだが、トリオとしての演奏もアドリブを少なめにしてコンパクトに纏めていながらも、コーエンをメインに各人の上手さは存分に堪能できるおかげで、どの曲をとっても最高にいい感じで楽しむことができる。中にはクラシカルな曲調もあったりするけれど、そういうものであってもリズムが強調されていて、単なるリリカルな演奏には終わっていないし、過去作品でくどく感じていた中東色が排除されているのも私の好みと合致している。楽曲は11曲目の「Smile」以外は非4ビート曲で統一されていて、6曲目「From Darkness」(この曲のみエレベを弾いている)等はテクニカル・フュージョン的な要素も強いので、オーソドックスなジャズしか聴かない人は違和感を感じるかもしれないけれど、三者が同じベクトルに向かいながらの、ピアノトリオとして非常に纏まりがよく、なおかつ完成度の高い演奏には完全にやられてしまった。全体的に落ち着いた雰囲気が漂っているものの、動と静のバランスもバッチリだね。
コーエンのリーダー作は当たり外れが多いのだが、本作は大当たり。欲を言えばトータルの演奏時間が41分とLP並に短いので、もう1~2曲追加するか、あるいは曲ごとの演奏時間がもう少し長くてもよかったような気もするけれど、演奏がとにかく素晴らしいのに加えて、録音も超優秀(各楽器の音質、音像、音場感共に申し分なし)なのだから、そんなことはどうでもよくなった。まだ10ヶ月残っているけど、今年のベスト10入りは確実だろうし、最優秀録音盤もこれに決まりかもしれない。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)