Jack DeJohnette / Made in Chicago

Henry Threadgill(As, Bass-Fl)
Roscoe Mitchell(Sopranino, Ss, As, Baroque-Fl, Bass Recorder)
Muhal Richard Abrams(P)
Larry Gray(B, Violoncello)
Jack DeJohnette(Ds)
Rec. August 2013, Live at the Chicago Jazz Festival
(ECM 2392)

ジャック・ディジョネットの「Jack DeJohnette / Sound Travels(12年、別頁あり)」等の近年のリーダー作も決して悪くはないのだが、ワタシ的にはNew DirectionsやSpecial Editionあたりの時代(1980年前後)の、もっと尖がった演奏が大好きなので、フリー系(かな?)のミュージシャンと共演している本作には、ライブ盤ということも相まって大いに期待している。といってもメンバーで名前を知っているのは、Art Ensemble Of Chicagoで生でも観たことがあるロスコー・ミッチェルと、AACMの設立者でもあるムハル・リチャード・エイブラムスぐらいだけどね。ヘンリー・スレッギル、ラリー・グレイも過去の何かのアルバムでは聴いたことがあると思うけど、平均年齢が70歳を超えている面々で、はたしてどのような演奏を繰り広げているのか楽しみだ。

ディジョネット曲が1曲、ミッチェル曲が2曲、スレッギル曲が1曲、エイブラムス曲が1曲、5人の共作が1曲で全6曲。
テンポのあるフリージャズとでもいえば分かりやすいかな。コード感の希薄な演奏だし、完全フリーになっている部分も多いので聴く人を相当選ぶと思うけど、たまにはこういうのもいいもんだね。最近は弩フリーをやる人が少なくなったので、むしろ新鮮に聴こえる。聴きどころは何といってもディジョネットの多点セットを用いながらのドラミングで、キース・ジャレットのスタンダーズ・トリオでの抑制されたプレイとは異なり、ディジョネット節全開でガツンといっているのが実にいい塩梅。70歳を過ぎてこれだけフレキシブルなドラミングができて、なおかつコルトレーンにも通じる精神性が感じられるドラマーはそうはいないだろう。そんなディジョネットに触発されてフロントの2人のサックス奏者(右chがスレッギルで左chがミッチェルだと思う)も相当凄いことになっているし、エイブラハムの指がコロコロとよく動いてフレージングにも張りがあるピアノも、80歳を過ぎた人のプレイとは到底思えない。メンバー全員が同じベクトルに向かいながらの即興的要素の強い演奏には、ただただ圧倒されるばかり。昔のフリージャズで好きになれなかったヒステリックさがないおかげで、どの曲にも集中の糸を切らすことなくのめり込むことができる。
もしかすると本作をきっかけに、またフリージャズ・ブームが到来するのではと思ってしまうほどに素敵な演奏だし、ジャズフェスのライブ・レコーディングのわりには、録音も各楽器が温かみを伴った音で録れていて極上(ECM的なリバーブ成分もよくマッチしている)なので、音楽的に自分の好みにバッチリ嵌っているとはいい難いし、何度も繰り返して聴きたいとも思わないけれど、これはオマケして5つ星にしておこう。こっち系のジャズとしては何十年ぶりかに良い演奏が堪能できた。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)