Chris Potter Underground Orchestra / Imaginary Cities

Chris Potter(Ts, Ss, B-Cl)
Adam Rogers(G)
Craig taborn(P)
Steve Nelson(Vib, Marimba)
Fima Ephron(El-B)
Scott Colley(Ac-B)
Nate Smith(Ds)
Mark Feldman(Vln), Joyce Hammann(Vln), Lois Martin(Viola), David Eggar(Cello)
Rec. December 2013, NY
(ECM 2387)

ECMからのリーダー作第一弾の前作「Chris Potter / The Sirens(13年、別頁あり)」もなかなか良かったクリス・ポッターだけど、本作ではクリス・ポッター・アンダーグラウンドのメンバーであるアダム・ロジャース、クレイグ・タボーン、ネイト・スミス、フィマ・エフロン(「Chris Potter Underground/Ultrahang(09年、別頁あり)」以降に加入したよう)に、新たにスティーヴ・ネルソン、スコット・コリーや、ストリングス・カルテットも加わった大編成のバンドで、はたしてどういうことになっているのか興味深い。似たような編成では「Chris Potter 10/Song For Anyone(07年、別頁あり)」もあったのだが、今回は楽器構成が異なっているし、土台も変拍子ファンクが特徴的なポッター・アンダーグラウンドなので、また一味違った演奏が堪能できそうだ。

全8曲がポッターのオリジナル。
1曲目「Lament」はストリングスのみの室内楽的なイントロからスタート。その流れで全体演奏になってからもゆったりとした感じの落ち着いた曲調となっていて、ポッター・アンダーグラウンドのイケイケな演奏とはだいぶ異なっているけれど、これはこれで悪くはないね。過去盤とも変わらないエモーショナルかつアグレッシブなポッターのテナーを聴いているだけでも十分に楽しめるし、次第に盛り上がっていく曲構成も見事としかいいようがない。バラード的な演奏でスタートする2曲目「Lmaginary Cities 1(Compassion)」も、前半は若干ウィズ・ストリングス的な甘さはあるものの、中盤からはいかにもポッター・アンダーグラウンドらしいビートの効いた演奏で楽しませてくれるし(ロジャースのアドリブもさり気なくカッコいい)、3曲目「Imaginary Cities 2(Dualities)」も待ち望んでいた変拍子(6/8+5/8拍子)だったりして、タボーンがエレピではなくアコピに専念しているのと出番も思っていたほどは多くないにしても、曲が進むにつれてポッター・アンダーグラウンドのハードな部分が打ち出されていていい塩梅。曲によってはネルソンが参加しているので、ポッターが在籍していた時代のデイヴ・ホランドのバンドサウンドにも通じるものがある。過度なフィーチャリングはしていないストリングスのアレンジにも非常に好感が持てるし、ポッターがやりたいことを完璧に把握しながらのメンバー各人のプレイのカッコよさも相変わらずで、もう本演奏には何の文句もつけようがない。楽曲はどれもがみんないいのだが、その中でもドラムソロからスタートする変拍子曲(5拍子基調)の5曲目「Imaginary Ciries 4(Rebuilding)」でのエネルギッシュな演奏と、同じくバイタリティに溢れていてタボーンも本領を発揮している8曲目「Sky」が特に気に入った。
ということで演奏は見事としかいいようがないし、変にECM的な色付けがされていない録音(エンジニアはジェームス・ファーバー)も上々で、本作は当然ながらの5つ星。ストリングス入りでこれだけしっくりくる演奏で聴かせてくれて、しかもトータル72分を全く長く感じさせないのだから、さすがにポッターだけのことはある。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)