Vijay Iyer Trio / Break Stuff

Vijay Iyer(P)
Stephan Crump(B)
Marcus Gilmore(Ds)
Rec. June 2014, NY
(ECM 2420)

ヴィジェイ・アイヤーの、ステファン・クランプ、マーカス・ギルモアとのトリオを聴くのは、「Vijay Iyer Trio/Historicity(09年、別頁あり)」「Vijay Iyer Trio / Accelerando(12年、別頁あり)」に次いで3枚目。今回は前作「Vijay Iyer / Mutations(14年)」(当方未購入)と同じECMからのリリースなのだが、ワタシ的には過去2作品の変拍子やポリリズムを駆使した演奏が大好きなので、できれば変にECMを意識したような演奏(静的な)にはなっていないことを願っている。

アイヤー曲が9曲と、モンクの「Work」、ビリー・ストレイホーンの「Blood Count」、コルトレーンの「Countdown」で全12曲。
非4ビートが主体。過去2作品と比較するとゆったりめのテンポの楽曲が多いものの、だからといって静的というわけでは決してないし、変拍子やポリリズムを取り入れながらのリズム重視の演奏は相変わらずなので、これでよしとしよう。何個かのモチーフを繋ぎ合わせたような半即興的な楽曲もまた剛柔のバランスがいい塩梅。ただし既成曲以外はメロディアスな要素が少ないのと、曲ごとの変化も乏しいので、ギルモアの小技が効いていて、なおかつアイデア豊富なドラミングを聴いているだけでも十分に楽しめるとはいえ、曲が進むにつれて少々退屈してくるけどね。ここはやはり速いテンポの曲や、メロディアスな曲も加えるなりして、もっとメリハリの効いた曲構成にする必要があったのではと思う。それとトリオとしての演奏は魅力的ではあるものの、リスナーに訴える力が不足しているような気がしなくもない。ベストトラックはギルモアがよく目立っている11曲目の「Countdown」と、もろ4ビートでやっている5曲目「Work」だけど、既成曲の方が良く感じてしまうということは、オリジナルの曲作りにも何らかの問題があると思うので(決して嫌いではないのだが)、その辺も今後の課題となりそうだ。
ということで全体的にはいい感じで楽しめるのだが、やっていることの全てに対して共感できるというまでには至らなかった。これが他レーベルでのレコーディングであれば作曲も含めて、トリオとしての演奏の持っていき方はまた変わっていたのかもしれない。録音もECMのNY録音(エンジニアはジェームス・ファーバー)としては平均的なものに終わっている。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)