Jimmy Greene / Beautiful Life

Jimmy Greene(Ts, Ss, Fl)
Ana Marquez-Greene(Vo)1, Isaiah Marquez-Greene(P)1, Javier Colon(Vo)3, Kurt Elling(Vo)4, Latanya Farrell(Vo)9, Anika Noni Rose(Spoken Word)10
Pat Metheny(Ac-G)1, Jonathan DuBose, Jr.(G)10
Kenny Barron(P)6,8, Cyrus Chestnut(P)9, Renee Rosnes(P)2,3,4,5,7, 10
Christian McBride(B)2,3,4,5,7,9,10
Lewis Nash(Ds)2,3,4,5,7,9,10
Musicians of the Hartford Symphony Orchestra(Violins, Violas, Cellos)3,9
Linden Christian School Early Years Choir, Brenda Johnson(Director)4,10
Rec. 2014?, NY and Linden Christian School
(Mack Avenue MAC1093)

銃の乱射事件で亡くなった愛娘への追悼盤。こういうのを聴くのは複雑な気持ちになるし、下手なことも書けない気がしてくるのだが、かといって同情ばかりしていても仕方ないので、アルバムとしての良し悪し(好き嫌い)は別ものと割り切ることにしよう。ジミー・グリーンのリーダー作はこれまで「Jimmy Green Sextet/Introducing Jimmy Greene(00年)」「Jimmy Greene/True Life Stories(06年)」「Jimmy Greene/Gifts And Givers(07年)」「Jimmy Greene/Mission Statement(09年)」「Jimmy Greene Quartet / Live at Smalls(11年)」(各別頁あり)を聴いてきたけれど、中でもエリック・ハーランド、グレッグ・ハッチンソン入りの4枚(「Introducing Jimmy Greene」以外)は非常にアグレッシブで素晴らしかった。本作ではまだそこまでの演奏ができる心境にはなっていないと思うけど、リニー・ロスネス、クリスチャン・マクブライド、ルイス・ナッシュのそそられる面々に、曲によってはパット・メセニー、カート・エリング、ケニー・バロン、サイラス・チェスナット等も加わって、どのようなことになっているのか興味深い。

グリーン曲が6曲と、Giardini Felice、Charles Wesley曲にトラディショナルを加えた「Saludos/Come Thou Almighty King」、Michael Neale、Krissy Nordhoffの「Your Great Name」、Lionel Bartの「Where Is Love?」、Charles Strouse、Martin Charninの「Maybe」で全10曲。
グリーンとメセニーのデュオ曲の1曲目「Saludos/Come Thou Almighty King」は、しんみりとした曲調なのに加えて、最後の方では奥さんのピアノ伴奏による娘さんの歌声まで入っているので涙なくしては聴けないけれど、純粋に演奏だけをとってみても実に素晴らしいね。二人とも非常に心のこもったプレイをしていて、もうこの1曲だけでも買ったよかったという気にさせてくれる。2曲目「Last Summer」からはロスネス、マクブライド、ナッシュとのカルテット演奏となっていて、曲によってはヴォーカル、ストリングス、子供のコーラスが参加しているのだが、曲のタイトルや歌詞には娘への想いが込められているものの、こちらの方もまた変にお涙ちょうだい的にはなっていない、いい意味でごく普通の4ビートジャズをやっているのがいい塩梅。バラード的なゆったりした曲調が主体となっていて、さすがにアグレッシブな演奏はやっていないけれど、グリーンが思っていた以上に吹けているのにはホッとする。バックのそつのない演奏や耳あたりのいいヴォーカルやコーラス、ストリングスが相まって、どの曲もいい感じで聴かせてくれるし、バロンとの6曲目「Where Is Love?」と8曲目「Maybe」のデュオや、チェスナットがバッキングだけで終わっている9曲目「Prayer」も悪くない。ただし2曲目、3曲目「When I Come Home」とフェードアウトしている曲が続いているのは気になるところ。誰かに捧げる演奏の場合はフェードアウトで余韻を残すことも効果的な手段ではあるけれど、アルバム的にはどちらか1曲だけに絞ってほしかった。
本作は私好みではないバラード集的なアルバム作りになっているけれど、これはこれでいい感じで楽しめた。音像がすっきりしていながらも、ちゃんと温かみが感じられる録音も上々。子供を亡くした悲しみは決して消えるものではないと思うけど、音楽は仕事だと割り切って、グリーンにはまたポスト・コルトレーン的にガンガン吹きまくってくれることを願っている。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)