Rick Roe / Voyager

Rick Roe(P)
Robert Hurst(B)
Karriem Riggins(Ds)
Rec. December 19-20, 2013, MI(Michigan)
(Unknown Records ??)

ロバート・ハースト、カリエム・リギンズ買い。リック・ロウはこれが初聴き。本人のサイトが見つかったので経歴等は後で目を通しておくとして、リーダー作は「Rick Roe / Monk's Modern Music(94年)」「同 / The Changeover(96年)」「同 / The Late Late Show(98年)」「同 / Bop Culture(01年)」「同 / Sphere(05年)」「同 / Minor Shuffle(08年)」の他にも、「同 / Originals(?年)」「同 / Swing Theory(11年)」がリリースされているのが他サイトで見つかった。ハーストとリギンズはその中の「Swing Theory」から引き続きの参加。過去盤にはロドニー・ウィテカーやグレゴリー・ハッチンソンも参加しているということは、きっとかなりの実力を持っているのだろう。それでいて知名度が高くないのは、ミシガン州を拠点に活動しているためなのかもしれない。

ロウ曲が4曲と、スタンダードの「All The Things You Are」「Wher Is Love?」「Sweet Lorraine」、「I'll Take Ramance」「Countdown(コルトレーン曲)」「I've Grown Accustomed To Her Face」のメドレー、ルグランの「The Summer Knows」、コルトレーンの「Satellite」で全10曲。
1曲目「All The Things You Are」の、大胆なアレンジを施した「タン・ンタ・タタ・ウン・ウタ・タン・タン・タン」というリフからしてカッコいい。それがまたリギンズの活きのいいドラミングともよくマッチしているね。ロウを聴くのはこれが初めてだけど、速弾きタイプのピアニストではないものの、左手も含めたフレージングの構築やリズムの持って行きかたがいい感じ。曲の後半にはハーストの力強いベースソロも用意されていて、この1曲だけで早くも買ってよかったという気にさせてくれる。バラード曲の2曲目「Wher Is Love?」は、手数の少なさを逆手に取った演奏となっているけれど、こういう曲調になるとボブ・ジェームス的な部分もあったりして、1曲目とはまた違った雰囲気のピアノが楽しめる。何かの曲をパクっているような感じのオリジナルの3曲目「Winged」は、明かるめでスウィンギーな曲調。おそらくピーターソン、あるいはもっと古いところでいうとハンプトン・ホーズあたりが根底にあると思うけど、そのフレーズを真似るのではなく、あくまでも雰囲気だけに留めているところに、彼なりのオリジナリティーが感じられる。同じくオリジナルの4曲目「Voyager」もどこかで聴いたことがあるような曲調。軽いラテンタッチも噛ませながらの8ビート演奏だけど、この曲もまた実にいいね。ロウはまたボブ・ジェームス調になっているけれど、後半ではハーストが非常にアグレッシブなソロで聴かせてくれる。5曲目の「I'll Take Ramance」「Countdown」「I've Grown Accustomed To Her Face」メドレーは、3拍子、高速4ビート、ミディアムの4ビートとテンポが目まぐるしく変化していながらも、各曲が綺麗に繋がっているのが素敵。普通のメドレーであれば、単に曲が移り変わるだけなのを、3曲を一つに見立てて、アドリブがその譜割で進行しているのもなかなかのアイデアだね。ハーストとリギンズのソロスペースもたっぷりと用意されていて、ワクワクしながら楽しませてくれる。オリジナルの6曲目「Blinker」(これまたどこかで聴いたことがあるような)はテーマ部分がリズム的にトリッキー。私好みのアップテンポな曲調の中、5曲目と同様にパンチの効いた演奏が楽しめる。
残りの曲は割愛するけれど、どの曲からも演奏の楽しさが伝わってくるし、ロウが俺が俺がといったタイプのピアニストではないおかげで、ハーストとリギンズのプレイも存分に堪能できて(特にハーストの凄みのあるベースには驚かされる)、これは買って大正解。録音もピアノだけは少々明るめな気がするけれど、ベースもドラムスも鮮明に捉えられていて良好だね。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)