Alex Mercado Trio / Symbiosis (J)

Alex Mercado(P)
Scott Colley(B)
Antonio Sanchez(Ds)
Rec. April 14-15, 2014, NY
(DiskUnion Jazz DUJ121)

スコット・コリー、アントニオ・サンチェスの最強リズム隊買い。リーダーのアレックス・メルカードはこれが初聴き。本人のサイトによるとサンチェスと同じメキシコ人で、リーダー作は2012年リリースの「Alex Mercado Trio / The Watcher」に次いで本作が2枚目。録音場所はNYのSystems Two Recording Studioとなっているけれど、ライブスケジュールを見ると普段はメキシコを拠点に活動しているようだ。メキシコのピアニストといえば、エイブラハム・バレラの「Abraham Barrera / Ocaso(13年、別頁あり、こちらにもサンチェスが参加している)」が記憶に新しいのだが、本作にはサンチェスと相性バッチリのコリーまで参加しているので、これで悪いはずはないだろう。あとはどれだけ凄いことになっているかだけだ。

全10曲がメルカードのオリジナル。
非4ビートがメインのコンテンポラリーな演奏。メルカードが思ったほどはアグレッシブなピアニストではない(むしろリリカルな要素の方が強い感じ)ことが功を奏して、3人が対等な立場による演奏が繰り広げられている。コリーのベースソロの場面は多く用意されているし、サンチェスも曲によっては、もしかすると自分のリーダー作よりもガツンといっているのではと思わせるほど容赦ないドラミングをしていて、実にいい塩梅だね。もちろん二人ともメルカードの音楽性をきちんと把握した上でプレイをしているので、うるさく感じることは全くない。逆に二人がここまで気合の入ったプレイをしていなければ、単なるヨーロピアンな匂いが感じられるリリカルなピアノトリオというだけで終わっていただろう。私としてはそんなコリーとサンチェスにばかりついつい耳が向いてしまうのだが、メルカードにもやはりラテンの血は流れていると見えて、アドリブが高揚してきたりアップテンポの4ビートの4曲目「Nothing Changes」なんかでは速弾きも駆使しながらギンギンに弾きまくっているだから、さすがにこの二人と共演できるだけのことはある。同じリズム隊ではエンリコ・ピエラヌンツィも「Enrico Pieranunzi / Permutation(12年、別頁あり)」「Enrico Pieranunzi with Scott Colley, Antonio Sanchez / Stories(14年、別頁あり)」を吹き込んでいるけれど、それらと比較しても遜色ないプレイで、その上手さを見せつけてくれる。またオリジナルの楽曲もどれもが優秀。おそらくピアニストとしてはピエラヌンツィと同様に、エヴァンスの流れを汲んでいるのだと思うけど、若干のダークさを漂わせながらのラテンタッチも加味した曲調は、ベネズエラ出身のエドワード・サイモンあたりにも通じるものがあって非常に好感が持てる。
さすがにコリーとサンチェスがリズム隊だけあって本作には大満足。録音もまた各楽器が非常にリアルに捉えられていて、この音の良さだけでも至福のひとときが味わえる。エンジニアはマイク・マルシアーノだけど(ミックスとマスターはDave Darlington)、彼が数多く手掛けているCriss Cross盤や他のアルバムと比較しても、本作は群を抜いているような感じがするね。特にコリーのベースがここまで良く録れているのは、過去にはあまり聴いたことがないだけに感激してしまった。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)