Kenny Barron, Dave Holland / The Art of Conversation

Kenny Barron(P)
Dave Holland(B)
Rec. March 5, 2014,NY
(Impulse 3794661)

ケニー・バロンのリーダー・アルバムにはデュオ作品がけっこう多いのだが、そっち系の演奏を好んで聴くことはない私が所有しているのは、ミノ・シネルとの「Kenny Barron, Mino Cinelu / Swamp Sally(95年)」のみと、バロンが好きなわりには寂しい状態となっている。チャーリー・ヘイデンとの「Charlie Haden, Kenny Barron / Night And The City(96年)」なんかもリリース当時はけっこうそそられたけど、あの時代はまだヘイデンに対して違和感を覚えていたので(重厚なベースの音があまり好きではなかった)、結局は買わず終い。でも同じベーシストでも、本作は大好きなデイヴ・ホランドとのデュオなので、すぐに飛びついたけどね。ホランドのデュオものは、完全デュオではないけれど「Dave Holland, Pepe Habichuela/Hands(10年、別頁あり)」もなかなか良かったので、ここでの演奏にも大いに期待している。

バロン曲が3曲、ホランド曲が4曲、パーカーの「Segment」、モンクの「In Walked Bud」、ビリー・ストレイホーンの「Daydream」で全10曲。
オリジナルを主体に演奏しているだけあって、二人の個性が楽曲にも程よく反映されていて実にいい塩梅。特にホランド曲の1曲目「The Oracle」は、ドラムがいなくても十分にホランドらしいリズミカルな演奏で楽しませてくれる。逆にバロン曲の2曲目「The Only One」では、テーマが思いっきりモンク調となっているけれど、モンク曲大好き人間の私としてはこういうのも大歓迎。そういう曲調のものを、普段はめったに演奏することがないホランドがベースを弾いているのだから、もうそれだけでもルンルン気分になってしまう。続く3曲目「Rain」での、歌もの的なバラードでのベースも、歌心がたっぷりで絶品だね。バロンとベース奏者のデュオであれば、むしろ「The Art of Three」シリーズで共演しているロン・カーターの方が相性がいいのではと思う人もいるかもしれないけれど、70年代以降のカーターはベースの音程がイマイチ芳しくないし、どういう演奏をするのかも聴かずして分かってしまうので、ここはやはりホランドにして正解だと思う。酸いも甘いも知り尽くしたバロンのピアノに対して、ホランドが必要以上に寄り添うことなくマイペースで弾いていて、それでいながら絶妙なマッチングを見せているのだから、さすがにこの二人だけのことはあるね。既成曲も含めて捨て曲は一切なし。5曲目は「Waltz For Wheeler(Dedicated to Kenny Wheeler)」(ホランド曲)となっているけど、ケニー・ホイーラーはつい先日亡くなったばかりなので、非常に感慨深いものがある。
デュオなので演奏上の制約はどうしても出てきてしまうけど、曲調の範囲内ではバロンもホランドもいい感じで聴かせてくれるので、最後まで退屈することなく楽しめた。録音はジェームス・ファーバーが担当。先日聴いたばかりの「Mark Turner Quartet / Lathe of Heaven(14年、別頁あり)」とは違って、最高に良い音(物理的にではなく音楽的に)で録れているね。演奏良し、録音良しで、これはオマケして5つ星にしておこう。小難しいことは一切やっていない親しみやすい演奏なので、本作はジャズ初心者にもうってつけかもしれない。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)