Ali Jackson / Amalgamations

Ali Jackson(Ds)
Wynton Marsalis(Tp)2,5
JD Allen(Ts)7,10
Ted Nash(As)11
Vincent Gardner(Tb)2,3,4,8
Jonathan Batiste(Rhodes)3,8
Shedrick Mitchell(Or)4,6
Aaron Goldberg(P)1
Eldar Djangirov(P)7
Omar Avital(B)1,9
Carlos Henriquez(B)2,4,5,6,7,10,11
Phillip Keuhn(B)3,8
Bobby Allende(Per)2
Rec. November 7-8, 2013, NJ
(Sunnyside SSC1378)

ウィントン・マルサリスのバンドやジャズ・アット・リンカーン・センター・オーケストラのイメージが強いアリ・ジャクソンは、他にも「Kurt Rosenwinkel/Deep Song(05年)」「Kasper Villaume/Hands(06年)」「Omer Avital/The Ancient Art of Giving(06年)」「Joshua Redman/Back East(07年)」「Eldar/Re-Imagination(07年)」「Ryan Kisor Quintet/Live at Smalls(10年)」「Aaron Goldberg, Omer Avital, Ali Jackson / Yes!(12年)」(各別頁あり)等、けっこう幅広い活動をしている。その関係もあり本作にはウィントン一派に加えて、上記アルバムで共演しているアーロン・ゴールドバーグ、エルダー・ジャンギロフ、オマー・アヴィタルも参加。トラックごとにメンバー構成が違うので、一同に会した演奏にはなっていないけど、その代わりにいろんなスタイルのジャズが楽しめそう。ジャクソンのリーダー作としては、「Ali Jackson / Groove at Jazz-En-Tete(00年)」「Ali Jackson Quartet / Big Brown Getdown(07年)」「Ali Jackson Quintet / Wheelz Keep Rollin'(12年)」に次いで、これが4枚目となる。

ジャクソン曲が4曲と、ガーシュウィン曲をもじった「Ali Got Rhythm」、R. Nobleの「Cherokee」、トラディショナルの「Just a Closer Walk With Thee」、スタンダードの「I Love You」、モンクの「Thelonius」、ショーターの「Fee Fi Fo Fum」、ジョー・ヘンダーソンの「Inner Urge」で全11曲。「Done Tol' You Fo' Five Times」「Cherokee」「Just a Closer Walk With Thee」「I Love You」「Thelonius」「Kentucky Girl」「Fee Fi Fo Fum」「Inner Urge」で全11曲。
1曲目「Ali Got Rhythm」は、ゴールドバーグが曲調に合わせてピーターソン化して弾いているのが面白い。ジャクソン、アヴィタルとの非常に骨太かつスウィンギーな演奏で楽しませてくれる。2曲目「Cachita」は思いっきりのアフロキューバン。現代的なラテンジャズではなく、あえて伝統的なスタイルでの演奏となっているのは、そういうのを一番大事にしているウィントンの教えなのだろう。これで「う~!」とかの掛け声が入っていれば完全に「マンボNo.5」の世界だね。3曲目「Done Tol' You Fo'」はニューオリンズのファースト・ライン的な南部ブルース。誰が歌っているのか、ヴォーカルまで入ってますます泥臭くなっているけれど、ジョナサン・バティステ(「Cassandra Wilson / Silver Pony(10年、別頁あり)」に参加していた)がアコピではなくエレピを弾いているおかげで新鮮に聴こえる。4曲目「Praise」はオルガン入りのバラードだけど、ジャクソンがタンバリンを叩きながらドラムを叩いていることあって、どことなくゴスペル的な雰囲気が感じられる。ヴィンセント・ガードナーのトロンボーンが実によく歌っているし、バッキングに徹しているだけではあるも、カルロス・エンリケスのリズミカルなベースもなかなかの聴きものだね。5曲目はウィントン、エンリケス、ジャクソンによるトリオ演奏。お馴染みの「Cherokee」を最高にいい感じで聴かせてくれて、ウィントンの上手さが改めて思い知らされるのだが、逆にどうして普段はこのような演奏をしないのかは疑問に感じるところ。ジャズの伝統にがんじがらめになってしまっているウィントンだけど、ハッキリいってここ20年ぐらいのリーダー作は、何枚かの例外を除いて面白くも何ともないので、早く変な使命感や義務感から脱却してくれればなあと思っている。6曲目はセカンドラインを上手く取り入れながらのファンク、というか昔のソウル風。シェドリック・ミッチェルのオルガンがいい味わいを醸し出していて、これまでの曲調とはまた一味違った雰囲気で楽しませてくれる。7曲目「I Love You」はエルダーのピアノソロからスタート。スタンダードの定番曲のバラード演奏だけど、テーマ部分からのJDアレンのテナーがよく歌っているし、エルダーはこういう曲を弾いていること自体が珍しいので、これまたいい感じで楽しめる。8曲目は大好きなモンク曲の「Thelonius」。演奏は比較的オーソドックスだけど、トロンボーンにエレピという変則的なカルテットとなっているので、それだけでも楽しめてしまうってところがあるね。9曲目「Kentucky Girl」はアヴィタルとジャクソンのデュオ。おそらく元ネタはカントリー曲だと思うけど、ここではグッとテンポダウンして、アヴィタルの重厚なベースを、ジャクソンがマレットプレイでサポートしているのがいい感じ。10曲目「Fee Fi Fo Fum」は、いかにもアート・ブレイキー&JMといった感じの、テーマ中のザクザクしたリズムがいいアクセントとなっている。サックストリオでの演奏だけど、ここでのJDアレンもまた、普段はあまり聴いたことがないよく歌うプレイで聴かせてくれる。11曲目はジョーヘン曲の「Inner Urge」。テナーの曲をアルトのテッド・ナッシュが吹いているだけでも面白いし、唸り声を発しながらソロをとっているエンリケスのベースのノリも最高。またここにきてようやくジャクソンのドラムソロも登場する。
本作は全然ドラマーらしい作りにはなっていないけど(ジャクソンが前面に出てきている曲は皆無)、どの曲にもジャズの楽しさが満ち溢れていて実にいいね。演奏もそうだけど、それに輪をかけて録音も優秀で、非常にリアルに録れているドラムスを筆頭に、各楽器ともクリアーながらも温かい音色で録れていて、この音を聴いているだけでも満足してしまう。エンジニアが誰なのかは、字が細かすぎて読めないけれど、今年の最優秀録音賞はおそらくこれに決定だろう。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)