Antonio Sanchez / Three Times Three

Antonio Sanchez(Ds, Additional Keybords on "Constellations")
Brad Mahldau(P)
Matt Brewer(Ac-B)
John Scofield(G)
Christian McBride(El-B, Ac-B)
Joe Lovano(Ts)
John Patitucci(Ac-B)
Rec. October 27, December 4, December 16, 2013, NY
(Cam Jazz CAMJ7879-2)

現代ジャズドラマーで一番好きなのがアントニオ・サンチェス。ドラミングが素晴らしいのは当然のことながら、その音楽性にも惚れていて、これまでの全てリーダー作(「Antonio Sanchez/Migration(07年)」「Antonio Sanchez / Live in New York: at Jazz Standard(10年)」「Antonio Sanchez / New Life(13年)」各別頁あり)を5つ星にしているのみならず、その年のベストアルバムの1位や2位にまでしてしまっているし、サイド参加のアルバムをベストアルバムに入れているケースも随分多い。それだけサンチェスに嵌っているということになるのだが、本作もまたブラッド・メルドーにマット・ブリューワー、ジョン・スコフィールドにクリスチャン・マクブライド、ジョー・ロヴァーノにジョン・パティトゥッチといった、非常にそそられる面々による3組のトリオでのレコーディングなのだから、これはもう5つ星は確実だろう。あとは今年のベストアルバムのトップ3候補である「Pat Metheny Unity Group / Kin(←→)」「Enrico Pieranunzi with Scott Colley, Antonio Sanchez / Stories」「Joshua Redman / Trios Live」(各別頁あり、うちメセニーとピエラヌンツィ盤にはサンチェスが参加)を超えているかどうかだね。

CD1がマイルスの「Nar-this(Nardis)」、サンチェスの「Constellations」「Big Dream」(メルドー、ブリューワーとのトリオ)、CD2がショーターの「Fall」、サンチェスの「Nooks And Crannies」「Rooney And Vinski」(ジョンスコ、マクブライドとのトリオ)、サンチェスの「Leviathan」「Firenze」、モンクの「I Mean You」(ロヴァーノ、パティトゥッチとのトリオ)で全9曲。
それぞれ傾向が異なったピアノトリオ、ギタートリオ、サックストリオの演奏を、1枚のアルバムで楽しめてしまうのがまずいいね。各曲の演奏時間が約8分から約14分までと長めなことも相まって、各人の高度なテクニックと音楽性をたっぷりと堪能できるのだが、なんといってもサンチェスのドラミングの素晴らしさには、もう1曲目の「Nar-this(Nardis)」からノックアウト。この曲はいろんな人の演奏を聴いていて、これまでは本元であるエヴァンス以外ではリッチー・バイラークの演奏が最高だと思っていたけれど、それをはるかに上回る演奏が展開されているのだから、どれだけ凄いのかということになる。それに輪をかけてオリジナルの「Constellations」では、更に凄まじいことになっているのだからぶっ飛びだね。容赦なく叩きまくっているサンチェスに煽られてか、メルドーも自分のリーダー作より優れているのではと思わせるほどのフレキシブルなプレイで聴かせてくれるし(今に始まったことではないが、メルドーはサイド参加の方が総じて好き)、ブリューワーもここまでできる人だったのかと、その上手さを再認識させてくれる。それは同じくオリジナルの3曲目「Big Dream」も同様で、このCD1を聴いただけで早くも完全にやられてしまった。このトリオは表現力も実に素晴らしくて(動と静のバランスも完璧)、サンチェス参加のピエラヌンツィのトリオを超えている部分が多々ある。その演奏の余韻に浸る間もなくCD2に移ったけど、ジョンスコ、マクブライドとのトリオもまた、ヘタすると同じリズム隊でやっているパット・メセニーの「Pat Metheny,C.McBride,A.Sanchez/Day Trip(08年、別頁あり)」「Metheny,McBride,Sanchez/Tokyo Day Trip Live EP(08年、別頁あり)」を凌ぐのではと思ってしまうほどの良い演奏。「Fall」での原曲のイメージを崩さないながらも、いかにもジョンスコらしいフィーリング感がたっぷりで、なおかつダイナミックな演奏はCD1以上にノリノリにさせてくれる。ここでのジョンスコはあえて歪の少ないトーンで弾いているけれど、それがまたマクブライドの強靭なベース、サンチェスの瞬発力のあるドラミングにもよくマッチしていて実にいい塩梅。もちろんいつのも歪ませたトーンによるウネウネ・ギターも2曲目「Nooks And Crannies」から登場してくるので、物足りなく感じることは全くない。ビル・スチュワートが在籍していたころのジョンスコ・バンドをもっとロック的にしたような感じの曲調の中、ジョンスコが非常にアグレッシブなプレイで聴かせてくれるし、続くマクブライドとサンチェスのソロも驚異的だね。それに加えて3曲目「Rooney And Vinski」ではギンギンな4ビートをやっていて、その演奏がまた凄まじいものだから、満足度は更に倍増する。またロヴァーノ、パティトゥッチとのトリオの方も決して負けてはおらず、4曲目「Leviathan」の出だしの部分だけは前曲の熱さまし的にロヴァーノとパティトゥッチのゆったりとしたデュオになっているものの、テーマに突入してからはアップテンポの7/8拍子による、3人が一丸となってのこれでもかというぐらいにアグレッシブな演奏が繰り広げられていて圧倒される。続く5曲目「Firenze」はそれよりも落ち着いた曲調ではあるけれど、これもまたアグレッシブなことには変わりないし、大好きなモンク曲「I Mean You」(6曲目)も、フリー的な要素も取り入れながらテンポを自在に変化させるといった(さらには7/8拍子のロック的な部分もあり)、いい意味で奇抜な演奏となっているのには驚かされる。
楽曲良し演奏良しで、過去の3作品と同様に本作もまた最高だね。サンチェスの真摯に音楽に向き合う姿勢や精神力の強さには、いつものことながら感服する。各楽器が非常にリアルに録れていながらも、決してうるささは感じさせない録音も優秀で、これはもう今年のベスト1に決まりだろう。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)