Walter Smith III / Still Casual

Walter Smith III(Ts)
Tayler Eigsti(P)
Matthew Stevens(G)
Harish Raghavan(B)
Kendrick Scott(Ds)
Ambrose Akinmusire(Tp)3,7,9
Rec. 2014?, NYC
(自主制作?)

ウォルター・スミスIIIのリーダー作は「Walter Smith III/Casually Introducing(06年)」「Walter Smith III/Live in Paris(10年)」「Walter Smith III / III(10年)」(各別頁あり)に次いで、これで3枚目(他に共同名義の「Walter Smith III, Mark Small/Bronze(09年)」もあり)ということになるのかな。メンバーが「Eric Harland / Voyager: Live by Night(10年、別頁あり)」「Eric Harland Voyager / Vipassana(14年、未聴)」でも一緒のテイラー・アイグスティとハリッシュ・ラグハヴァン(?)に、「Christian Scott/Yesterday You Said Tomorrow(10年)」「Ben Williams / State of Art(11年)」「Christian Scott / Christian aTunde Adjuah(12年)」「Next Collective / Cover Art(13年、スミスIIIも参加)」(各別頁あり)でのプレイが聴きものだったマシュー・スティーヴンス、エリック・ハーランドにも決して引けをとらないケンドリック・スコット、そして盟友のアンブローゼ・アーキンムシーレイまでもがゲスト参加しているのだから大いにそそられるね。本作は自主制作盤のような感じなのだが、プロデュースは上記「Ben Williams / State of Art」「Next Collective / Cover Art」も手がけたクリス・ダン(Chris Dunn)が担当している。

スミスIII曲が9曲と、スティーヴンス曲が1曲で全10曲。
非4ビートが主体の典型的な現代ジャズ。これぞNYの最先端といった感じがするのだが、やっていること自体は「Walter Smith III / III」や「Eric Harland / Voyager: Live by Night」とも大きくは変わらず、ダークな曲調をメインとした知的ながらもアグレッシブな演奏が目茶苦茶カッコいい。ブランフォード・マルサリス、ジョシュア・レッドマン、クリス・ポッターあたりと比較すると、スミスIIIのテナーはいくぶんクールな感じがするし、速いパッセージでガンガン攻めまくるといったわけでもないけれど、そこがまたやっている曲調ともよくマッチしていて、終始いい感じで聴かせてくれる。またスティーヴンスもよほど音楽の指向性が似通っているのか、本演奏にバッチリ嵌ったプレイをしているのだが、同音色でばかりで弾いているためか(曲によってはアコギも用いているが)、いまいちインパクトに欠けているのが残念なところ。でもこれ以上派手な音色を使ってしまうと、スミスが引き立たなくなってしまう恐れもあるので、やはりこれぐらいでちょうどいいのかもね。ギタープレイ自体に関しては何の問題もない。アイグステイはさすがにハーランドのバンドでも一緒なだけあって、スミスIIIの女房役を完璧に果たしているし、端正なベースで土台をがっちりとキープしているラグハヴァンもまた同様。スコットはゆったり目のテンポの曲が多いこともあって思ったほど叩きまくってはいないけど(といっても曲によってはけっこうガツンとくる)、彼もまた抜群のマッチングを見せているのが素敵。それに加えて3曲に参加しているアーキンムシーレイも、渾身のプレイでその上手さを魅せつけてくれる。楽曲はどれもがみんな良いのだが、その中でもテーマが複雑な構成となっていながらも、決して頭でっかちには感じさせない1曲目「Foretold You」、アーキンムシーレイの頑張りがよく目立つ3曲目「Something New」、思いっきりのバラード演奏が途中から盛大に盛り上がる5曲目「Greene」(WRの「A Remark You Made」的といえば分かりやすいだろう)、アコギやシンセ的な音がサウンド上のスパイスとなっている6曲目「Processional」、ジャズロック調のビートをもっと現代風にカッコよくした7曲目「Fing Fast」、ブレッカー・ブラザーズ風なテーマ部分からして吹くのが大変そうな高速4ビート曲の9曲目「About 360」が特に気に入った。
同じくスミスIII、アイグスティ、ラグハヴァン参加の「Eric Harland Voyager / Vipassana」は後日聴く予定だけど、試聴した段階であまり面白くないことはすでに分かっているので、逆に本作はやけによく感じるね。さすがに自主制作で本当にやりたい音楽を追求しただけのことはある。録音も各楽器が過不足なく捉えられていて上々だ。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)