Baptiste Trotignon / Hit

Baptiste Trotignon(P)
Thomas Bramerie(B)
Jeff Ballard(Ds)
Rec. March 28-29, 2014, Paris
(Naive NJ624411)

夏休み明けの1枚目は、早く聴いてみたくてうずうずしていた本作から行ってみよう。バプティスト・トロティニョンを買うのは「Baptiste Trotignon・David El-Malek/Fool Time(07年)」「Baptiste Trotignon/Share(09年)」「Baptiste Trotignon/Suite...(10年)」(各別頁あり)以来。なので非常に久しぶりであると同時に、今回はホーン楽器はなしの純然たるピアノトリオ作品となっているので、はたしてどういうことになっているのかワクワクするね。メンバーのトーマス・ブラメリーは上記「Suite...」にも1曲だけ参加していたけれど、ジェフ・バラードとはこれが初共演ということになるのかな。バラードはブラッド・メルドー・トリオ諸作品でも、他のドラマーとは一味違った個性的なプレイで魅せつけてくれているので、本演奏にも大いに期待している。

全11曲がトロティニョンのオリジナル。
1曲目「Choral」はベースの単音に乗っかりながらのプレイに、どことなくフランスのエスプリが感じられる。続く2曲目「Abracadabra」は一転して、チック・コリアを思わせるようなスパニッシュな演奏(7/8拍子基調)となっているけれど、この曲でのトリオとしての疾走感が目茶苦茶カッコいい。トロティニョンが素晴らしいのは当然のことながら、ブラメリーのベースを土台としながら、かつてはコリアのオリジン・バンドにも在籍していたバラードが曲調にバッチリ嵌ったドラミングで鼓舞していて(ちょっとしたドラムソロもあり)、しかもうるささや変なでしゃばり感は全く感じさせないのだから、早くも買ってよかったという気にさせてくれる。でも単調な8ビート曲の3曲目「Paul」は、ワタシ的には少々ズッコケ。トロティニョンはアドリブ時にビートルズの「Eleanor Rigby」のフレーズ等を引用しながらノリノリに弾いているし、こういう曲調のものも彼本来の持ち味とはいえ、わざとらしいスネアのローチューニングの音色(サイドスネアかな?)も含めて、なんとなく陳腐なものに感じてしまう。とはいえ4曲目「Air」は抒情的なメロディーに中東の匂いが感じられるリズムを絡めた5/4拍子がなかなかの聴きものなので、これでよしとしておくけどね。以降の曲も、中にはいまいちピンとこない部分もあったりするけれど、トリオとしてはよく纏まっているし、アルバムとしての動と静のバランスに優れていることもあって、総じていい感じで楽しむことができる。楽曲的には2曲目の他にも、前半と後半部分でバラードが炸裂している6曲目「Busy Rosalie」、アップテンポの4ビート基調の9曲目「Solid」が特に気に入った。曲によってはトロティニョンが付加的にシンセも用いているけれど、それがMIDI対応のアコピに同期させたものなのか、あるいはオーバーダブなのかは、私の耳では分からない。
ということで全てに共感できるといったわけではないけれど、トロティニョンに抱いているイメージどおりの演奏を、久しぶりに堪能できた。録音も各楽器の音質、バランス共に上々だね。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)