John Escreet / Sound, Space and Structures

John Escreet(P)
Evan Parker(Ts, Ss)
John Hebert(B)
Tyshawn Sorey(Ds)
Rec. September 25, 2013, NY
(Sunnyside SSC1386)

リーダー作「John Escreet / The Age We Live In(11年)」「John Escreet / Exception to the Rule(11年)」「John Escreet / Sabotage and Celebration(13年)」や「David Binney/Aliso(10年)」「Antonio Sanchez / New Life(13年)」「David Binney / Anacapa(14年)」(各別頁あり)でのプレイがなかなか気に入っているジョン・エスクリートだけど、本作には苦手なエヴァン・パーカーが参加しているので購入を躊躇してしまった。でもアバンギャルドなパーカーとの共演で、エスクリートがどのような音楽展開を見せているのか、逆に興味深いものはあるけどね。他のメンバーのジョン・エイベアは、つい先日も「Fred Hersch Trio / Floating(14年、別頁あり)」で聴いたばかり。スティーヴ・コールマンのバンドに在籍していたタイシャン・ソーリー(?)は、近作では「David Binney / Lifted Land(13年、別頁あり)」に参加していたので、エスクリートとはデヴィッド・ビニー繋がりなのは間違いないだろう。

「Part I」~「Part IX」と題した、全9曲がエスクリートのオリジナル。
想像していた通りのフリージャズ。もしかすると共演する機会が多くて、フリーまでも守備範囲にしているビニーの影響を受けてこのような演奏をしてみたいと思ったのかもしれないが、やっていることに違和感は感じないものの、演奏が面白いとはいい難い。この手のものは70年代にもっと凄いやつを聴いてきたからね。それらの野性的な演奏と比較すると、どうしても知性が邪魔しているように感じてしまうのだが、同じような知的なフリージャズであっても、Circle時代のチック・コリアなんかはもっとアイデアが斬新で、なおかつ演奏自体も最高にカッコよかったのだから、パーカーはこれが彼の音楽の本質なので別格として、他のメンバーはエスクリートも含めて役者不足のように思えてしまう。苦手なはずのパーカーのプレイが一番よく感じてしまうということは(特に循環呼吸によるエンドレスなロングフレーズが圧巻)、やはりこのメンバーでフリーをやるのには無理があるのだろう。これで死闘を繰り広げているようなガツンとくる演奏があればまだしも、空間を生かした静的な演奏がメインとなっているので(しかもソーリーが休んでいる曲が多い)、半分ぐらい聴いた時点で飽きてしまった。そんな中7曲目「Part VII」なんかは無調和であるもアップテンポの4ビートをやっていて、それなりにいい感じで楽しませてくれるけどね。でも各人とも引き出しがそんなに多くなくて、フリーをやっているにもかかわらず、どのような展開になっていくのか先が読めてしまうので、結局のところはこの手の演奏を聴いているときに抱くようなワクワク感を得ることはできなかった。
とあまりいいことは書いていないけど、フリージャズに対する免疫がない人にとっては、これぐらいがちょうどいいのかな。とりあえずフリーの美味しさはギュッと濃縮されているので、入門編としてはいけそうな感じがする。録音はサックスにヒステリックさが感じられない、全体的にも丸みを帯びている音質に好感が持てる。

評価☆☆ (☆ 最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)