Chick Corea Solo Piano / Portraits

Chick Corea(P)
Rec. 2013?, A tour of Canada, the U.S. and Europe
(Concord Jazz 7235603)

チック・コリアのソロピアノ作品は2000年の「Chick Corea / Solo Piano Originals(別頁あり)」「Chick Corea / Solo Piano Standards」以来14年ぶり。その間はいろんな自己バンドでの活動が続いていて、ソロ的なものは「Chick Corea,Bela Freck/The Enchantment(07年)」「Chick Corea & Hiromi / Duet(08年)」「Chick Corea, Stefano Bollani / Orvieto(11年)」、あるいは盟友ゲイリー・バートンとの「Chick Corea&Gary Burton / The New Crystal Silence(08年、Disc 2)」「Chick Corea & Gary Burton / Hot House(12年)」(各別頁あり)といったデュオ作品ぐらいしかなかったので、久しぶりに本格的に取り組んでみたくなったのだろう。といってもレコーディングのためにわざわざスタジオ入りしたわけではなく、ソロツアーの中からのベストトラックが収録されていて、楽曲も既成曲や過去のオリジナルを多く取り上げているのが、いかにもサービス精神が旺盛で、ライブで客席と共に盛り上がるのが大好きなコリアらしいところ。この辺は同じソロでも集中力の度合いが全く違うとはいえ、お客さんの咳一つで演奏を中断してしまうキース・ジャレットも今一度考える必要があるのではと思っている。

Disc 1がコリアの「Improv #1 / How Deep Is the Ocean? 」、エヴァンスの「Waltz for Debby」、スティーヴィー・ワンダーの「Pastime Paradise」、モンクの「'Round Midnight」「Pannonica」「Blue Monk」、バド・パウエルの「Dusk in Sandi」「Oblivion」、コリアの「The Yellow Nimbus」、Disc 2がアレクサンドル・スクリャービンの「Prelude #2 (Op. 11)」「Prelude #4 (Op. 11) 」、バルトークの「Bagatelle #1」「Bagatelle #2」「Bagatelle #3」「Bagatelle #4」、コリアの「Children's Song #1」「Children's Song #2」「Children's Song #3」「Children's Song #4」「Children's Song #5」「Children's Song #9」「Children's Song #10」「Children's Song #11」「Children's Song #12」、同じくコリアの「Portrait #1 - Krakow」「Portrait #2 - Krakow」「Portrait #1 - Casablanca」「Portrait #2 - Casablanca」「Portrait #1 - Easton, Maryland」「Portrait #2 - Easton, Maryland」「Portrait #3 - Easton, Maryland」「Portrait #4 - Easton, Maryland」「Portrait #1 - Vilnius」「Portrait #2 - Vilnius」で全34曲。
最初のMCからして観客を和ませている。これでこそお客さんが変な緊張感から解放されて、咳のような予期せぬ生理現象も自然と和らぐんだよね。2曲目の前でも「これはなかなかいいピアノだ」といったニュアンスのことをいってみたりして、ますますリラックスさせているのだが、もちろん演奏はだらけたものでは全くなく、いかにもコリアらしいアイデア豊富かつリズミカルな、ピリッと引き締まったプレイでグイグイと引き込ませてくれる。どれだけ好きな楽曲なのか、「'Round Midnight」をここでも演奏しているけれど、それでいながら新鮮な気持ちで楽しませてくれるのだから、さすがに大したものだね。Disc 1にジャズ曲、Disc 2にクラシカルな曲が収録されていて、その両方を異なった雰囲気で楽しめるのもまたいい塩梅。どういう演奏をしているのかはコリアが好きな人であれば想像がつくと思うので、この曲のこの部分はどうとかの野暮ったい感想は書かないけど、トータル130分の長丁場にもかかわらず、退屈することなく一気に聴きとおおすことができるし、これが初聴きのオリジナル「Portrait」(クレジットには明記されていないが、誰か(ベカ・ゴチアシュヴィリかな?)とデュオっているよう)の各パートが、よく知られた「Children's Song」と比較しても遜色ない楽曲であることだけは記しておこう。コリアが昔から大好きだと公言しているバルトークの曲までも、原曲を聴いてみたい気にさせてくれる。
演奏は文句なしに素晴らしいし、何か所のライブが収録されたのかは分からないけれど、ピアノの濁り成分までがリアルに捉えていて、なおかつ会場の空気感を含めたピアノの音質がきちんと統一されているバーニー・カーシュの録音も、今に始まったことではないけれど見事としかいいようがない。当然ながらの5つ星だけど、コリアがマイ・フェイバリット・ミュージシャンだからといって点数を甘くしているわけでは決してなく、私の場合そういうミュージシャンに対しては、逆に常日頃から厳しい目で見ていることを付け加えておく。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)