JD Allen / Bloom

JD Allen(Ts)
Orrin Evans(P)
Alexander Claffy(B)
Jonathan Barber(Ds)
Rec. January 8, 2014, NJ
(Svant SCD2139)

前作「JD Allen / Grace(13年、別頁あり)」はエルダー・ジャンギロフ参加ということで、期待したわりにはイマイチだったJDアレンだが、本作ではエルダー以上に音楽的な相性がよさそうなオリン・エヴァンスが参加しているのに加えて、楽曲的にもオリジナルの他に、よく知られたスタンダード・ナンバーも取り上げているので、また一味違った演奏が楽しめそう。メンバーのジョナサン・バーバーは「Grace」から引き続き。これが初聴きと思っていたアレキサンダー・クラッフィーは、「Orrin Evans / "...It Was Beauty"(13年、別頁あり)」にAlex Claffyという略名で1曲だけ参加しているのが見つかったけど、本作に参加できたのもエヴァンス繋がりなのだろう。

アレン曲が7曲と、スタンダードの「If You Could See Me Now」「Stardust」、トラディショナルの「Pater Noster」で全10曲。
基本的には「Grace」とも変わらないフリー指向の強い演奏が繰り広げられているのだが、そっち系のプレイも得意としているエヴァンスがピアノなので、よりいい感じに仕上がっている。「Grace」ではデズロン・ダグラスとバーバーのリズムのずれが気になったけど、ここでのクラッフィーはそんなこともなく、周囲の状況をよく見渡しながらもリズム隊として一体感のあるプレイで聴かせてくれる。曲途中でときたま用いているアルコ弾きなんかもサウンド上のいいアクセントとなっているね。そんなリズム隊やエヴァンスのツボを得たバッキングに乗っかりながら、アレンが絶好調に吹きまくっているけれど、必要以上にフレーズが細かくなっていないのはこれまでと同様なので、後期コルトレーン的な演奏が苦手な人であったとしても拒否反応を示すことはないと思われる。フリー調ながらもビートがしっかりしている分聴きやすいし、ダークな曲調が続いている中での6曲目「If You Could See Me Now」(サックストリオだけの演奏)や、7曲目「Stardust」(アレンのカデンツァ曲)もまた格別だね。むしろこの2曲や9曲目の「Pater Noster」、ラストのオーソドックスなブルース曲「Car-Car(The Blues)」を引き立たせたいががために、他の曲をあえてフリーにしたのではと思うほどノリノリに楽しませてくれる。もちろんフリー調の曲の方も聴き応えがあって、私なんかはバーバーの活きのいいドラミングを聴いているだけでも買ってよかったという気になってしまうのだが、欲をいうならエヴァンスのアドリブの出番だけはもう少しあってもよかったかも。でも彼が気合を入れすぎるとアレンを喰ってしまう恐れもあるので、サイドメンとしてはこれぐらいでちょうどいいのかもしれない。
フリー基調ながらも、バンドとして息のバッチリ合った演奏が楽しめるし、録音(エンジニアはTom Tedesco、マスターは内藤克彦)も各楽器がガッチリとしていながらも温かみのある音色で録れていて上々だね。JDアレンは、グレッグ・オーガスト、ルディ・ロイストンとやっているサックストリオ諸作品が好きなのだが、本作もそれらと同じぐらいに気に入った。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)