Wolfgang Muthspiel, Larry Grenadier, Brian Blade / Driftwood

Wolfgang Muthspiel(G)
Larry Grenadier(B)
Brian Blade(Ds)
Rec. May 2013, Oslo, Norway
(ECM 2349)

ウォルフガング・ムースピールのリーダー作を買うのは「Wolfgang Muthspiel 4tet/Earth Mountain(08年、別頁あり)」以来。その間にも「Wolfgang Muthspiel, Andy Scherrer, Larry Grenadier / Drumfree(11年)」とソロ作品の「Wolfgang Muthspiel / Vienna Naked(12年)」がリリースされているのだが、どちらもドラムレスなのでパスしている。なので本作で久しぶり(「W. Muthspiel,B. Blade/Friendly Travelers(07年、別頁あり)」以来)にブライアン・ブレイドと共演しているのがまず嬉しい。ムースピールにしてもブレイドにしても、ECMでのレコーディングはこれが始めてだと思うけど、マンフレート・アイヒャー・プロデュースの元、はたしてどういう演奏が繰り広げられているのか楽しみだ。

ムースピール曲が7曲と、3人の共作が1曲で全8曲。
1曲目「Joseph」はいかにもECMといった感じの、空間を活かしながらのノンテンポな演奏。サウンド的にはジョン・アバークロンビーあたりとも共通するものがあるのだが、単に静寂なだけではなく、曲が終わるちょっと前のハードな展開が、以降の曲への期待感を高めさせてくれる。2曲目「Uptown」はアコギによる軽快な16ビート調の曲。この手の演奏はブレイドとの過去の共演盤「Friendly Travelers」等でもやっていたと思うけど、ここではグレナディアのリズミカルなベースと、かなり抑えながら叩いているものの、躍動感が感じられるブレイドのドラミングに乗っかりながら、ムースピールが自分の持ち味を活かした端正なギターを弾いているのがいい感じだね。終わりの方でのグレナディアのソロもなかなかの聴きものだ。バラード調の3曲目「Cambiata」もアコギを弾いているけれど、こうして聴くと出だしのソロなんかはラルフ・タウナーを連想させるものがある。美しいながらも決してリリカルなだけには終わっていない曲調の中、ムースピールもグレナディアも一音一音に心がこもったプレイをしているし、2人の邪魔にならないよう、さりげない味付けをしているブレイドもさすがだね。4曲目「Highline」はイントロでのグレナディアのアルコ弾きが印象的。ムースピールはここにきて初めてロック的な歪み系の音でエレギを弾いているけれど、当然ながらブレイドもそれに見合ったボリュームで叩いていて、ようやく期待通りの演奏に出会えるのが嬉しい。でもダイナミックに盛り上がっている部分で尻切れトンボで終わっているのは残念なところ。演奏時間は5分41秒なので、そんなに短いわけでもないけれど、せっかくの気合の入った演奏なのだから、できればもっと長く聴いていたかった。アコギ使用の5曲目「Driftwood」は、スパニッシュ風のアルペジオをモチーフとしながらの半即興曲。その流れでノンテンポの6曲目「Lichtzelle」(こちらはエレギ使用)に突入しているけれど、特に6曲目の方はECMを意識しすぎているようで、私としてはあまり好きではない。同じように静的な演奏であっても、続く7曲目のように美メロながらギターとドラムスのちょっとしたソロ交換があるといったような、なんらかの仕掛けが用意されていれば面白いんだけどね。ビリー・ハートなんかもそうだけど、今後もECMでやっていくのであれば、その辺のことをいま一度考えてみる必要がありそうな気がする。
残りの曲は割愛するけれど、ムースピールには元々ECM的な要素があったとはいえ、実際にECMにレコーディングしてみると、ますますその傾向が強くなっているので、できることならばブレイドが大炸裂するほどのアグレッシブな曲を1~2曲ぐらい取り上げて欲しかった。録音はヤン・エリック・コングスハウクが担当(もちろんレインボー・スタジオ)。ドラムスが過度にECM的な音色にはなっていないのと、ベースがガッチリとした音で録れているのに好感が持てる。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)