Eric Alexander / Chicago Fire

Eric Alexander(Ts)
Jeremy Pelt(Tp)
Harold Mabern(P)
John Webber(B)
Joe Farnsworth(Ds)
Rec. November 26, 2013, NJ
(HighNote HCD7262)

ストレート・アヘッドな演奏は大好きではあるも、メンバー的なマンネリ感が否めないエリック・アレキサンダーのリーダー作を買うのは「Eric Alexander Quartet/Prime Time(08年、別頁あり)」以来。その間にもOne For All諸作品や「Jim Rotondi Quintet/Live at Smalls(10年)」「Neal Smith Quintet/Live at Smalls(10年)」「Mike LeDonne / Keep The Faith(11年)」「Pat Martino Quartet / Undeniable(11年)」「Jim Rotondi and The Loop / Hard Hittin' at The Bird's Eye(13年)」(各別頁あり)等で彼のプレイは耳にしているのだが、本作はいつものワンホーン・カルテットではなくクインテット編成となっていて、しかもトランペットが腐れ縁的なジム・ロトンディからジェレミー・ペルト(アレキサンダーとは「Make LeDonne / Fivelive(08年)」でも共演しているのを今知った)に代わっているので、興味津々飛びついた。

アレキサンダー曲が2曲、ハロルド・メイバーン曲が2曲、スタンダード系の「Save Your Love for Love」「Just One of Those Things」「You Talk That Talk」「Don't Take Your Love From Me」で全8曲。
これまでと変わらないジャズの王道路線的なオーソドックスな演奏が楽しめる。そんな中においてのペルトの華のあるトランペットが非常にいいアクセントとなっているね。ここ何枚かのリーダー作に見受けられるようなマイルス色を払拭した、ペルト本来のブリリアントなプレイ(フレディ・ハバード的な)が他のメンバーにも刺激を与えていて、結果的にはバンドとしても若返ったような印象。アレキサンダーもペルトに負けることなくガンガンいっているし、メイバーンの年を全く感じさせないプレイも相変わらず素敵だね。またジョン・ウェーバーとジョー・ファンズワースもそれなりのプレイで聴かせてくれて、演奏自体に大きな不満はないのだが(楽曲的には過去にも何かのアルバムで聴いたことがあるメイバーン曲の2曲目「The Bee Hive」が目茶苦茶カッコいい)、各楽器の音色を加工した録音がせっかくの演奏を台無しにしている。エンジニアはヴァン・ゲルダー。50~60年代のブルーノート録音が好きな人にとってはたまらないのかもしれないが(私もその時代や70年代のCTI時代のヴァン・ゲルダーは大好きだった)、現代の録音でシンバルをここまでシャリシャリさせるのはいかがなものかと思う。トランペットはそこそこいいとして、テナーも痩せ気味に録れているし、ピアノにも深みが感じられないし、ベースにもガッチリとした芯が不足しているし、全体的なバランスもなんとなくちぐはぐしていて、それらに加えて右chの音がブチッと途切れてしまう部分が数カ所あるという致命的な欠陥のせいで、最後まで音楽に没頭できないままに終わってしまった。演奏面においても、3曲目「Eddie Harris」以降は7曲目「You Talk That Talk」を除きペルトが抜けていて、彼に期待して買った身としては肩透かしを食らってしまうしね。それでもシカゴ・ジャズの醍醐味だけは堪能できるのでこれでよしとしておくけれど、これよりだったら私が買っていないアレキサンダーのリーダー作の中に、他にいいものがいっぱいあったかもしれない。
ということで本作は期待外れ。HighNote盤はエンジニアの違いが(わたし的にはヴァン・ゲルダーでない方が好ましい)、アルバムとしての良し悪しを決定づけることがあるのをすっかり忘れていた。

評価☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)