Ralph Peterson / The Duality Perspective

Ralph Peterson(Ds)
(Fo'tet)1~5
Joseph Doubleday(Vib)
Alexander L.J. Toth(B)
Felix Peikli(Cl, Bass-Cl)
(Sextet)6~10
Luques Curtis(B)
Zaccai Curtis(P)
Sean Jones(Tp)
Walter Smith III(Ts)
Tia Fuller(As, Ss)
Special Guests: Bryan Carrott(Marimba)2, Reinaldo Dejesus(Per)2,4,7,9, Edwin "Eddie" Bayard(Ts)7,10, Victor Gould(P)9,10
Rec. January 24, 2012, Boston, MA
(Onyx Music Label 8450171894)

大好きなラルフ・ピーターソンだけど、2012年8月リリースの本作は完全に見逃していた。本アルバムは前半が「Ralph Peterson / Fo'tet Augmented(04年)」と同様のクラリネット、バイブ入りのフォーテット(カルテット)編成(Ralph Peterson Fo'tetとしては他にも「The Ralph Peterson Fo'tet / The Fo'tet Plays Monk(97年)」や「Ralph Peterson Jr and The Fo'tet / Back To Stay(00年)」がある)、後半がかつてのOTB(Out Of The Blue)を連想させるフロントに3管を配したセクステット編成となっているのだが、セクステットにはよく知っている面々が参加しているのに対し、フォーテットの方は誰一人として知らないのが興味深い。各人の経歴等をいちいち調べるのは大変なので割愛するけれど、ピーターソンと共演できるぐらいなので、きっと相当なやり手なのだろう。曲によってはブライアン・キャロット他のゲスト陣も加わって、はたしてどういうことになっているのか楽しみだ。

ピーターソン曲が8曲と、モンクの「Four In One」、Jonathan Pinsonの「Impervious Gems」で全10曲。
アルバム前半のフォーテットは「Ralph Peterson / Fo'tet Augmented」とも大きくは変わらない印象で、クラとバイブによる乾いたサウンドが特徴的。ベースのデイヴ・ホランド的な定型ビートに乗っかりながら、ピーターソンが派手目のドラミングでガツンといっていて、クールな中にも熱気が感じられる演奏が現代的でカッコいいね。共演者の3人はおそらく若手だと思うけど、フェリックス・ペイクリ(?)、ジョセフ・ダブルデイ(?)、アレキサンダー・トス(?)共にそれ相応の実力を持っているし、彼らを纏め上げているピーターソンのリーダーシップもさすが。もちろんドラミングに関しても申し分がない。2曲目ではモンクの「Four In One」を、このバンドによくマッチした洒落たアレンジでやっているけれど、この曲に前任のブライアン・キャロットがマリンバで参加しているということは、もしかするとキャロットとダブルデイは師弟関係にあるのかな。いずれにしてもどの曲においても、バンドとしてはキャロットやドン・バイロン参加の「Fo'tet Augmented」と比較しても遜色ない演奏が堪能できる。また6曲目からのセクステットの方もより安定感とガッツのある演奏で、さすがにこのメンバーだけのことはある。特に女性のティア・フラーは、ショーン・ジョーンズ、ウォルター・スミスIIIに決して負けていないのだから大したもの。そんな3人が大きくフィーチャーされているのだが、兄弟で参加しているサッカイ・カーティス(兄)とルケス・カーティス(弟)もまた非常に魅力的なプレイで聴かせてくれて、ピーターソンに関してはフォーテットでのプレイの方がよく目立っている印象ではあるも、こちらもまた最高にいい感じで楽しませてくれる。3管編成にありがちな単なるハードバピッシュな演奏だけには終わっていないのもグッドだし、曲によりフォーテットとセクステットの両方に参加しているレジナルド・デヘスース(?)のパーカッションもいいアクセントとなっている。圧巻は急速調の4ビートのラスト曲「Pinnacle」で、フロントの3人の速いパッセージでのテーマ・アンサンブルからして滅茶苦茶カッコいいことになっているし、当然ながらピーターソンも持ち前の攻撃性を発揮しながら攻めまくっている。
リリースされてからだいぶ経ってしまったけど、本作は買って大正解。近年は「Ralph Peterson's Unty Project / Outer Reaches(10年)」「Pat Bianchi / Back Home(10年)」「Ralph Peterson / Alive at Firehouse 12 - Vol.1: The Unity Project(13年)」(各別頁あり)で、オルガン奏者と共演しているピーターソンだが、それらとは雰囲気が一味違った演奏が楽しめた。録音もセクステットの方はドラムスが若干奥に引っ込んでしまっているけれど、その点を除いては上々。なおピーターソンは、本作でもMAPEXのドラム(ヘッドはEVANSのOnyx)を使用している。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)