Bryn Roberts / Fables

Bryn Roberts(P)
Seamus Blake(Ts, Ss)
Orlando LeFleming(B)
Johnathan Blake(Ds)
Rec. December 12, 2012, NY
(19/8 1030)

シーマス・ブレイク、ジョナサン・ブレイク買い。リーダーのブリン・ロバーツを聴くのはこれが初めてと思っていたのだが、自ブログで検索したら「Alan Ferber Nonet/The Compass(07年、別頁あり)」に参加しているのが見つかった。ロバーツのファンサイトによると、カナダ出身の27歳(いつの時点かな?)で、2001年からはNYを拠点に活動中。ピアノはフレッド・ハーシュに師事し、2000年にメイナード・ファーガソン・ビッグバンドでプロデビューしたようだ。2005年には初リーダー作「Bryn Roberts / Ludlow」(FSNT)をリリース。それにもシーマスが参加しているのは、彼がロバーツと同じカナダ人なのが関係しているのかもしれない。またベースのオーランド・レフレミング(1976年、イギリス生まれ)も、シーマスとは「Seamus Blake/Way Out Willy(07年、別頁あり)」で共演歴がある。

ロバーツ曲が6曲と、スタンダードの「In The Still Of The Night」「Guess I'll Hang My Tears Out To Dry」で全8曲。
1曲目「Corlear's Hook」はマイケル・ブレッカーがジャズをやっているときのような曲調がカッコいい。コルトレーン・カルテットをもっと現代的にしたような感じの演奏で、早くもグッと引き込ませてくれるけど、容赦なくガツンといっているシーマスと比べると、ロバーツは影が薄いような気がしないでもない。できればジョーイ・カルデラッツォのようにモーダルに攻めてくれると嬉しいのだが、コードにきちんと嵌ったプレイをしているということは、そういう要素は持ち合わせていないのだろう。速弾きも得意とはしていないようだけど、これはこれで雰囲気的には悪くないし、彼なりのダイナミックさもちゃんと感じられる。2曲目「Nightsong」はシーマスがソプラノに持ち替えたメロディアスな非4ビート曲。曲調としてはこちらの方がロバーツの奏法によくマッチしているね。でもアドリブ二番手のシーマスがインパクトの強いプレイをしているのに加えて、ジョナサンも活気あふれるドラミングをしているので、またまたロバーツのピアノが地味に感じてしまう。それは3曲目「Canadian」以降も同様だけど、聴き進むにつれて冒険心はない代わりに非常に安定感のあるピアノが心地よく感じるようになってくるので、これでよしとしておこう。音楽の方向性はきちんと定まっていない印象ではあるも、オリジナルの楽曲もなかなかのもので、どことなくヨーロピアンな匂いがしていながらも、変にリリカルになることなく、ちゃんとNY的な厳しさやスウィンギーさも兼ね備えているのが私の好みとも合致している。
そんな演奏はバックの3人の頑張りもあって(特にシーマスは、参加曲では彼のリーダー作かと勘違いしてしまうほどに吹きまくっている)、総じていい感じで楽しめるのだが、録音は温かい音色で録れているのは好感が持てるとしても、ピアノとベースの輪郭が甘いのと、音像の定位がピアノが右chでドラムスが左chと通常の逆になっているのには違和感を覚える。音量レベルが高いおかげで演奏がグイグイ迫ってくるので、細かいことは聴いているうちにどうでもよくなるけど、この定位だけは最後まで気になった。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)