Dayna Stephens / I'll Take My Chances

Dayna Stephens(Ts, Bs)
Charles Altura(G)
Gerald Clayton(P, B3)
Joe Sanders(B)
Bill Stewart(Ds)
Becca Stevens(Vo)6
Rec. January 23, 2013, NY
(Criss Cross 1361)

「Dayna Stephens / Today is Tomorrow(12年、別頁あり)」から、メンバーをガラリと代えたデイナ・スティーブンスのCriss Cross第二弾。ジェラルド・クレイトンとジョー・サンダースの組み合わせは、これまでも「Gerald Clayton/Two-Shade(09年、別頁あり)」や「Gerald Clayton / Bond: The Paris Sessions(10年、別頁あり)」で聴いたことがあるとして、二人とはこれまで共演歴がなかったと思われるビル・スチュワートが参加しているのには大いにそそられる。ビルスチュはスティーブンとも初共演だけど、そこに「Tigran Hamasyan/Red Hail(09年、別頁あり)」「Stanley Clarke/The Stanley Clarke Band(10年、別頁あり)」「Chick Corea / The Vigil(13年、別頁あり)」でフランク・ギャンバレばりのギターを弾いていたチャールズ・アルトゥラまで加わって、はたしてどういう演奏が繰り広げられているのか楽しみだね。

スティーブンス曲が5曲、スティーブンスとマーカス・ギルモアの曲作「Field of Landmines」、アーロン・パークスの「Adrift」、エリントンの「Prelude to a Kiss」、ブラッド・メルドーの「Unrequited I」「Unrequited II」で全10曲。
3曲目「Adrift」まではダークな曲調に統一しながらのコンテンポラリーな演奏で、場面によってはコルトレーン的なスピリチュアルな要素や、60年代マイルスを連想させるミステリアスな要素が加わっているのが特徴的。スティーブンスのテナーは「Dayna Stephens / Today is Tomorrow」と同じく、ジョー・ヘンダーソンあたりによく似た印象を受けるけど、そこにアルトゥラがThe Vigil等のときとは一味違ったマイク・モレノ的なプレイで絡んでいるのがいい塩梅。こういう曲調であればエリック・ハーランド等の黒人ドラマーの方がよくマッチしそうなところを、あえてビルスチュを起用することにより、異なったサウンド・カラーにしているのもグッドだね。そう思いながら聴いていると4曲目ではセカンド・ビートを基調とした明るめな曲調のファンクもやっていたりして、この辺の演奏はビルスチュ入りのジョンスコのバンドが過去にもやっていたことなので、ますます彼の存在意義が高まってくる。この曲では他のアルバムでは聴いた記憶がないクレイトンのラリー・ゴールディングスばりのオルガン・プレイも楽しめるし、スティーブンスのバリトンも悪くないね。ただし3曲目までは曲調が凝りすぎというか、少々頭でっかちな部分も見受けられるので、ストレートな4ビートで勝負している5曲目「Unrequited I」等の方が、むしろ純粋に楽しめる感じがする。それとベッカ・スティーヴンズのヴォーカル入りの6曲目「Prelude to a Kiss」も、いいアクセントにはなっているものの、曲調的に違和感を覚えるし、1曲目「Good Tree, Good Fruit」や7曲目「Field of Landmines」のサックスの部分的な多重録音(エフェクターかな?)も必要性が感じられないね。それらの点を除いては、さすがにこのメンバーだけあっていい感じで楽しめるのだが、クレイトンに関してはアドリブはもっとあってもよかったと思う。でもギターも参加しているので、バランス的にはこれぐらいでちょうどいいのかもしれない。そういえばサンダースとビルスチュもこれといったソロを取っていないけど、ビルスチュの場合はバッキングだけでも十分聴かせてくれるので一向に構わないとして、サンダースは一昨日聴いたばかりの「Philip Dizack / Single Soul」の方ではよく目立ったプレイをしていたので、もっとスポットを当ててほしかった。
ということで全面的に共感できるわけではないのだが、基本的には私好みの演奏なので、これでよしとしよう。マイケル・マルシアーの担当の録音も、Criss Crossとしての平均的な音で録れているので大きな不満は感じない。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)