Eli Degibri / Twelve

Eli Degibri(Ts, Ss, Mandolin)
Gadi Lehavi(P)
Barak Mori(B)
Ofri Nehemya(Ds)
Shlomo Ydov(Vo)7
Yaron Mohar, Yael shapira, Pini Shavit(Choir)9
Rec. December 12-13, 2012, Israel
(Plus Loin Music PL4563)

「Eli Degibri Trio/Live at Louis 649(08年、別頁あり)」が最高に素晴らしかったエリ・デジブリだけど、その後にリリースされた「Eli Degibri/Israeli Song(10年、別頁あり)」は超豪華なメンバーでのレコーディングにもかかわらず、演奏はあまりパッとしなかったので、本作には期待している。でもイスラエルでのレコーディングで、メンバーも全員イスラエル人(「Full House/Champagne Taste(05年)」「The Uptown Quintet/Live in New York(05年)」「Eric Reed/Happiness(01年?)」「Marcus Printup/London Lullaby(09年)」「Jim Rotondi / 1000 Rainbows(10年)」(各別頁あり)等に参加しているベースのバラク・モリ(1975年生まれ)しか知らないが、名前からしてたぶんそうだと思う)ということは、そっち色が相当強くなっているということなのかな? だとすると望んでいる音楽(「Live at Louis 649」のような)とは方向性が異なるのだが、とりあえずは知らない人たちとの演奏でどういうことになっているのか楽しみだ。

デジブリ曲が8曲と、スタンダードの「Autumun in New York」で全9曲。
2曲目「The Spider」のように、確かにイスラエル色を感じさせる曲調もあるけれど、基本的にはアメリカナイズされた演奏が中心となっているので、まずはホッとする。その楽曲は親しみやすいメロディーのものが多く、3曲目「Roaming Fantasy」なんかは昔から馴染みのある曲のような既視感があるのだが(何かのスタンダード曲のコード進行を引用しているのかも)、演奏自体はけっこうテンションが高くて、決してありきたりにはなっていないのは、さすがにデジブリだけのことはあるね。男性ヴォーカル入りの7曲目「Liora Mi Amor」や、マンドリンを弾いている9曲目「The Cave」を除き、どの曲でもワンマンに感じられるギリギリの線まで吹きまくっているけれど、その歌心を含めた相変わらずのテクニックの素晴らしさには聴き惚れてしまう。またピアノのガディ・レハヴィも、バッキングは普通だけど、アドリブでは華麗なテクニックでその上手さを見せつけてくれる。HMVレビューによるとレコーディングの時点で16歳で、チック・コリアが強力にバックアップして目をかけているピアニストだそうだけど、いかにもコリアが好みそうな明快なリズムやタッチが身体に心地いい。それと18歳のドラマー、オフリ・ネヘミアも曲によっては青臭く感じられる部分があるにしても、変拍子(5/4拍子)の2曲目「The Spider」や、マンボ+4ビートの4曲目「Mambo」では豊富なアイデアとテクニックを駆使しながら、若さに満ち溢れたドラミングで聴かせてくれるし(8曲目「Old Seven」でのスピーディーなドラムソロにも圧倒される)、若手の2人を見守りながら、がっちりと土台を支えているモリの堅実なベースにも好感が持てる。
演奏的には「Eli Degibri Trio/Live at Louis 649」に到底敵わないものの、豪華メンバーとの共演盤「Eli Degibri/Israeli Song」から一転して、本作では若手を育成しようとする姿勢が顕著に現れているのが素晴らしい。もちろんバンドとしての演奏は平均点を上回っているし、録音も温かみのある音で録れていながらもパンチが効いてるおかげで、最後までいい感じで楽しむことができた。これでガツンとくるようなハードな曲がもう1~2曲あれば更によかったと思う。

評価☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)