Alex Sipiagin / From Reality and Back

Alex Sipiagin(Tp)
Seamus Blake(Ts)
Gonzalo Rubalcaba(P, El-P)
Dave Holland(B)
Antonio Sanchez(Ds, Per)
Rec. February, 2013, NY
(5 Passion 4023201364)

なんともまあ凄いメンバーのアルバムが登場したものだね。アレックス・シピアギンの新譜は1ヶ月前にも「Alex Sipiagin / Live at Smalls(13年、別頁あり)」を聴いたばかりだけど、それにも参加していたシーマス・ブレイクはさておき、ゴンサロ・ルバルカバ、デイヴ・ホランド、アントニオ・サンチェスのつわものが揃っているのだから、もう聴く前から興奮してしまう。おそらくホランドとルバルカバが共演している「The Monterey Quartet/Live at the 2007 M.J.F(09年、別頁あり)」を聴いて、ホランド・バンドの一員でもあるシピアギンが、自らもルバルカバと一緒にやりたくなったのだと思うけど、向こうはエリック・ハーランドだったのに対し、同じく現代最高峰のドラマーで、過去にも何度も共演しているサンチェスをぶつけているのだから、本レコーディングに対するシピアギンの並々ならぬ意気込みが窺える。

シピアギン曲が7曲と、パット・メセニーの「Son, Uvedeny Posle」で全8曲。
1曲目はシピアギンとブレイクのテーマのフレーズが複雑に絡み合っている8ビート系の変拍子曲。ゆったり感を醸し出しながらのモーダルな曲調が、いかにも現代ジャズといった感じでカッコいい。普段よりもかなり音数を抑えてエレピを弾いているルバルカバと、逆に細かいリズムで攻めまくっているサンチェス(ドラムソロも驚異的)の対比が面白いし、反復フレーズを黙々と弾いているホランドの、いい意味での不気味さも彼らしい。そんなリズム隊に乗っかりながら、シピアギンとブレイクがエモーショナルなプレイで聴かせてくれる。2曲目は普通の4/4拍子ではあるも、ホランドがシンコペーションを効かせながら弾いているので、パッと聴きでは変拍子と勘違いしてしまいそうになる8ビート系のモーダルな曲。静かな曲かなと思って聴いていると、いきなりダイナミックに盛り上がったりして、緩急差が非常にある演奏がこれまたカッコいい。アドリブ一番手のルバルカバ(この曲からはアコピを弾ている)は、最初は音をまさぐっているような感じだけど、アプローチの方向性が決まってからはたたみかけるような速弾きをしていて、その凄さを思い知らせてくれる。シピアギンとブレイクはそれに触発されずに冷静に吹いているけれど、それでもバックのサンチェスに煽られて、必然的に熱いプレイになってるし、後半でのホランドもどっしりしたソロも素敵。3曲目はゆったりとした4ビートではあるも、6/4拍子なのがミソ。曲調的には60年代マイルス黄金クインテットを連想するけれど、そんな中各人ともモーダルな曲調にバッチリと嵌ったのプレイをしていて、この曲もまた実にいい塩梅だね。4曲目は4/4拍子ながらもベースのラインがトリッキーだし、実際にも部分的に変拍子(というか変小節)になっていたりする複雑な曲調。シピアギンとブレイクの熱いバトル(4バース)を繰り広げていたり、ルバルカバがこれでもかというぐらいにモーダルに弾いていたり、サンチェスの超強力なドラムソロがあったりと、そもそもがハードな曲調の中、ホランドのガッチリしたベースに乗っかりながら、各人ともブチ切れたプレイをしていて、そのあまりの凄さには圧倒される。
残りの曲は割愛するけれど、本作は「Alex Sipiagin / Live at Smalls」の比ではないね。シピアギンの近作では「Alex Sipiagin / Destinations Unknown(11年、別頁あり)」が最高だったけど、それをも上回っている感がある。このメンバーのことなので、きっと凄いことになっているだろうと予想はしていたのだが、それ以上に素晴らしい演奏なのだから、当然ながらの5つ星。録音もホランドのベースは少々柔らかく録れているものの、それ以外は概ね良好だ。

評価☆☆☆☆☆ (☆最悪!、☆☆悪い、☆☆☆普通、☆☆☆☆良い、☆☆☆☆☆最高!)